突発性難聴のステロイド治療|効果や副作用を解説

突発性難聴のステロイド治療|効果や副作用を解説

耳鼻咽喉科で突発性難聴と診断され、ステロイド治療を始めたものの、

「ステロイドで本当に治るのだろうか。」

「点滴と飲み薬では、どちらが効果が高いのだろうか。」

「副作用が強い薬と聞いて不安。」

と感じている方もいると思います。

ステロイドは、突発性難聴の初期治療として国内で広く用いられている薬です。

ただし、服用すれば必ず聴力が回復するわけではなく、治療効果には個人差があります。

また、内服、点滴、鼓室内ステロイド注射では、投与方法や検討される状況が異なります。

この記事では、突発性難聴にステロイドが使われる理由、内服・点滴・鼓室内ステロイド注射の違い、期待できる効果、副作用、十分に改善しない場合の選択肢について解説します。

1.突発性難聴にステロイドが使われる理由

1.突発性難聴にステロイドが使われる理由

1-1.ステロイドの作用

ステロイドは、突発性難聴の初期治療として広く使用されています。

突発性難聴は、明らかな原因を特定できない急性感音難聴です。

発症には、次のような病態が関係していると考えられています。

  • 内耳の循環障害
  • ウイルス感染や再活性化
  • 免疫反応や炎症

ただし、これらは原因として考えられている仮説であり、患者さんごとに原因を特定できるわけではありません。

ステロイドには、炎症や過剰な免疫反応を抑える作用があります。

そのため、内耳の炎症やむくみなどが関係している場合に、聴力の回復につながる可能性があると考えられています。

国内の『急性感音難聴診療の手引き』では、ステロイドを中心とした治療が示されています。

また、アメリカ耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNS)のガイドラインでも、発症2週間以内に検討できる初期治療の選択肢とされています。

一方で、突発性難聴には自然に聴力が回復する例もあり、ステロイドがどの程度回復に寄与したのかを個別に判断することは困難です。

研究上も、その有効性には不確実な部分が残されています。

それでも、治療の開始が遅れるほど一般に回復しにくくなる傾向があるため、実際の診療ではステロイドによる早期治療が広く行われています。

1-2.早期受診が重要

突発性難聴では、発症から治療開始までの期間が予後に関係します。

ステロイドによる初期治療は、一般に発症後できるだけ早く始めることが重視されます。

AAO-HNSのガイドラインでは、発症2週間以内が検討時期として示されています。

ただし、受診を2週間まで待ってよいという意味ではありません。

耳の聞こえにくさ、耳鳴り、耳の詰まった感じなどが突然現れた場合は、「そのうち治るだろう」と様子を見ず、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。

発症から時間が経過するほど、一般に聴力が回復する可能性は低くなる傾向があり、ステロイドの効果も得られにくくなると考えられています。

一方で、2週間を過ぎた時点で改善の可能性が完全になくなるわけではありません。

発症からの期間や治療後の聴力によっては、追加治療が検討されることがあります。

2.ステロイド治療の種類

2.ステロイド治療の種類

2-1.内服ステロイド

内服ステロイドは、突発性難聴に対して一般的に行われる治療です。

プレドニゾロンなどのステロイド薬を一定期間服用し、治療計画に応じて量を減らしながら終了することがあります。

薬の種類、開始量、服用期間、減量方法は、難聴の程度、基礎疾患、年齢、医療機関の治療方針などによって異なります。

外来で治療を受けられることが内服の利点です。

ただし、自己判断で服用量を減らしたり中止したりせず、処方どおりに服用してください。

副作用や気になる症状が現れた場合は、無理に服用を続けるのではなく、速やかに主治医へ相談しましょう。

2-2.ステロイド点滴

ステロイド点滴は、難聴の程度や全身状態、医療機関の治療方針などに応じて選択されます。

重度の難聴や強いめまいがある場合などに、入院して行われることもあります。

点滴は薬を血液中へ投与するため、

「飲み薬より点滴の方が強く効くのではないか。」

と思う方もいるでしょう。

しかし、全身投与として適切な量が使用される場合、点滴が内服よりも一律に高い効果を示すとは確認されていません。

投与方法は、難聴の程度だけでなく、基礎疾患、薬を飲める状態かどうか、通院の可否なども考慮して主治医が判断します。

大切なのは、自分で投与方法の優劣を決めることではなく、できるだけ早く診断を受け、自分の状態に合った治療を開始することです。

2-3.鼓室内ステロイド注射

鼓室内ステロイド注射は、鼓膜を通して中耳へステロイドを注入する治療です。

中耳に入った薬は、主に正円窓膜などを介して内耳へ移行すると考えられています。

次のような場合に検討されます。

  • 内服や点滴で十分な改善が得られなかった
  • 全身への副作用をできるだけ抑えたい
  • 糖尿病などがあり、全身への高用量ステロイド投与が難しい

初期治療として行われることもありますが、特に重要なのが、内服や点滴で回復が不十分だった場合の追加治療です。

AAO-HNSのガイドラインでは、初期治療後も回復が不十分な場合、発症26週間で鼓室内ステロイド治療を行うことが推奨されています。

一方で、鼓膜への注射が必要になるため、一時的な耳の痛みやめまいが現れることがあります。

まれに鼓膜の穴が残る可能性もあります。

実施できる医療機関や治療方針には違いがあるため、適応や開始時期については耳鼻咽喉科の主治医へ相談してください。

3.ステロイド治療の効果

3.ステロイド治療の効果

ステロイドは突発性難聴の初期治療として広く行われていますが、すべての方の聴力が元の状態まで回復するわけではありません。

回復の程度には、次のような要因が関係します。

  • 治療を開始するまでの期間
  • 難聴の程度
  • 聴力低下の周波数
  • めまいの有無
  • 年齢
  • 糖尿病などの基礎疾患

一般に、発症から治療開始までの期間が短く、難聴が軽い方ほど回復しやすい傾向があります。

一方、難聴が重度である場合や、強いめまいを伴う場合などは、回復しにくいことがあります。

聴力は治療開始後すぐに変化する場合もあれば、数日かけて徐々に変化する場合や、治療終了後に回復がみられる場合もあります。

ただし、その変化がステロイドによるものか、自然経過によるものかを明確に区別することは困難です。

治療開始後すぐに自覚的な変化がないからといって、自分で「効いていない」と判断して服用を中止してはいけません。

反対に、聞こえが改善したように感じても、自己判断で治療を終了するのは避けてください。

治療効果は自覚症状だけで判断せず、主治医の指示に従って聴力検査を受け、治療前後の変化を確認することが重要です。

4.ステロイドの副作用

4.ステロイドの副作用

ステロイドには強い薬というイメージがありますが、突発性難聴では比較的短期間の使用となることが一般的です。

そのため、長期使用と比べれば重い副作用のリスクは低くなります。

ただし、短期間であっても副作用が起こらないわけではありません。

主な副作用には、次のようなものがあります。

  • 胃の不快感や胸やけ
  • 不眠
  • 食欲の増加
  • 血糖値の上昇
  • 血圧の上昇
  • 気分の変化
  • 感染症にかかりやすくなる可能性

特に糖尿病のある方は、ステロイドによって血糖値が上昇することがあります。

高血圧、胃潰瘍、感染症、緑内障などの持病がある方も、治療前に主治医へ伝えてください。

また、現在服用している薬や、過去にステロイドで副作用が出た経験についても伝えることが大切です。

副作用が心配だからといって、自分で薬を減らしたり中止したりすると、治療計画に影響する可能性があります。

気になる症状が現れた場合は、自己判断せず主治医へ相談してください。

ステロイドの副作用や、ステロイドを使いにくい場合の治療について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

突発性難聴のステロイド副作用|主な症状と使えない場合の治療

5.ステロイドで改善しない場合の治療

5.ステロイドで改善しない場合の治療

ステロイド治療を受けても、十分に聴力が回復しないことがあります。

しかし、治療後すぐに「もう治らない」と判断するのではなく、聴力検査で経過を確認し、発症からの期間に応じた追加治療について主治医へ相談することが重要です。

追加治療として、主に次の方法が検討されます。

  • 鼓室内ステロイド注射
  • 高気圧酸素療法

鼓室内ステロイド注射は、初期治療後の回復が不十分な場合に行われる治療です。

前述したとおり、AAO-HNSのガイドラインでは発症26週間での実施が推奨されています。

高気圧酸素療法は、高い気圧の環境で酸素を吸入する治療です。

AAO-HNSのガイドラインでは、ステロイドとの併用を前提として、初期治療では発症2週間以内、追加治療では発症1ヶ月以内に検討できる選択肢とされています。

追加治療には検討できる時期があるため、ステロイド治療後の改善が十分でない場合は、早めに主治医へ相談してください。

高気圧酸素療法は実施できる施設が限られており、すべての方に適しているわけではありません。

どの治療を行うかは、発症からの期間、聴力、全身状態などを踏まえて判断されます。

改善しない理由や、その後に検討される治療について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

突発性難聴でステロイドが効かない|理由と次の治療法

6.当院における鍼治療の考え方

6.当院における鍼治療の考え方

当院には、病院でステロイド治療を受けたものの、聞こえや耳鳴りが十分に改善せず、不安を抱えている方が来院されます。

鍼治療は、ステロイドや鼓室内ステロイド注射など、耳鼻咽喉科で行われる治療の代わりになるものではありません。

当院でも、発症後はまず耳鼻咽喉科を受診し、必要な検査と治療を受けることが重要だと考えています。

そのうえで当院では、聞こえや耳鳴りの状態だけでなく、首や肩周囲の筋緊張、体調、睡眠なども確認し、患者さんごとの状態に合わせた鍼治療を行っています。

当院の臨床経験では、病院での治療後に鍼治療を行うなかで、聞こえや耳鳴りに変化がみられた例があります。

ただし、すべての方に改善がみられるわけではなく、経過や改善の程度には個人差があります。

当院では、発症から3ヶ月以内で、病院での治療後も改善を目指したい方を主な相談対象としています。

7.まとめ

ステロイドは、突発性難聴の初期治療として広く用いられています。

治療では、次の点が重要です。

  • 耳の症状が突然現れたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診する
  • 内服と点滴のどちらが適しているかは、症状や全身状態によって異なる
  • 自己判断で薬の量を変更したり中止したりしない
  • 副作用や気になる症状があれば主治医へ相談する
  • 治療効果は自覚症状だけでなく、聴力検査で確認する
  • 回復が不十分な場合は、時期を逃さず追加治療について相談する

ステロイドを使用しても、すべての方の聴力が元の状態まで回復するわけではありません。

一方で、初期治療後の回復が不十分な場合でも、発症からの期間によっては鼓室内ステロイド注射や高気圧酸素療法などが検討されます。

まずは主治医の指示に従って治療を受け、経過を聴力検査で確認することが大切です。

ステロイド治療後も改善しない方へ

ステロイド治療後も改善しない方へ

当院では、病院での治療後も聞こえや耳鳴りが十分に改善せず、発症から3ヶ月以内で改善を目指したい方からのご相談を受け付けています。

耳の症状だけでなく、首や肩周囲の筋緊張、体調、睡眠なども確認し、患者さんごとの状態に合わせた鍼治療を行います。

鍼治療による経過には個人差があり、改善を保証するものではありません。また、病院での検査や治療に代わるものでもありません。

「病院での治療を受けたが、ほかにできることがないか相談したい。」

そのような方は、お早めに当院へご相談ください。

参考文献

1.日本聴覚医学会 編.急性感音難聴診療の手引き 2023年版.金原出版.2023

2.Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update). Otolaryngology-Head and Neck Surgery. 2019;161(1_suppl):S1-S45.

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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