突発性難聴の回復過程|改善する人にみられやすい経過と変化

突発性難聴の回復過程|改善する人にみられやすい経過と変化

薬を飲み始めて1週間。

朝起きるたびに、

「今日は昨日より聞こえるだろうか。」

そう思いながら、耳の状態を確かめていませんか。

インターネットを見ると、

「数日で聞こえるようになった」

1週間くらいで改善した」

という体験談がある一方で、自分はほとんど変化を感じない。

すると、

「このまま治らないのではないか。」

と不安になる方もいると思います。

実際に当院でも、発症から1週間ほど経った患者さんから、

「まだほとんど変わらないのですが、大丈夫でしょうか。」

と相談を受けることがあります。

突発性難聴は、人によって回復の速さや程度が大きく異なります。

発症から数日で改善する方もいれば、数週間かけて少しずつ回復する方、聴力低下が残る方もいます。

その一方で、研究や診療ガイドラインからは、回復しやすい時期や経過に一定の傾向があることも分かっています。

この記事では、突発性難聴の一般的な回復過程を時系列で説明したうえで、当院でみられる回復パターン、改善に伴って現れることがある変化、注意したい経過について解説します。

1.突発性難聴の一般的な回復過程

1.突発性難聴の一般的な回復過程

突発性難聴は、発症時の聴力低下の程度、治療を開始するまでの期間、めまいの有無、年齢などによって予後が異なります。

そのため、他の人の体験談と同じように回復するとは限りません。

一般的には、早い段階で聴力改善がみられる方ほど、その後も良好な経過をたどる傾向があります。

一方、発症から時間が経つにつれて大きな聴力改善は得られにくくなります。

ただし、「2週間で改善しなければ治らない」「1ヶ月経ったら回復しない」と明確に区切れるものではありません。

標準治療が終了した後に、さらに聴力が改善する方もいます。

ここからは、発症からの経過に沿って一般的な傾向をみていきます。

1-1.発症〜3日

突発性難聴は、早期の診断と治療が重要な病気です。

片耳が突然聞こえにくくなった、耳鳴りや耳の詰まりが急に現れたという場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診する必要があります。

突発性難聴と診断された場合は、全身状態などを確認したうえで、ステロイド治療が検討されることが一般的です。

ただし、治療を始めた翌日から必ず聞こえが戻るわけではありません。

数日で変化を感じる方もいれば、まだほとんど変化を感じない方もいます。

この時期は自己判断で薬を中断せず、処方された治療を続けることが大切です。

無理を避け、睡眠と休養を確保しながら経過をみていきます。

1-2.発症1週間前後

発症から1週間前後になると、少しずつ変化を感じ始める方がいます。

例えば、

  • 耳鳴りが小さくなった
  • 耳の詰まった感じが軽くなった
  • 会話を聞き取りやすくなった
  • 音が以前より自然に聞こえるようになった

といった変化です。

一方、1週間経っても自覚的な変化がほとんどない方もいます。

日本で行われた研究では、治療開始後7日以内に聴力検査で20dB以上の改善がみられた方は、最終的な治癒率が68%、治癒または著明回復まで含めると98%だったと報告されています。

この結果からは、治療開始後の早い段階で聴力が改善する方ほど、最終的な経過も良好になりやすいことが分かります。

ただし、これは特定の医療機関で治療を受けた患者さんを対象とした研究結果です。

すべての患者さんに同じ数値が当てはまるわけではなく、1週間で改善がみられないからといって、その後の回復がなくなったわけでもありません。

自覚症状だけでは聴力の変化を正確に判断できないこともあるため、耳鼻咽喉科で聴力検査を受け、治療前の結果と比較することが重要です。

1-3.発症2週間前後

発症から2週間前後になると、回復している方と、思うような改善がみられない方との差が少しずつ現れてきます。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の診療ガイドラインでは、全身ステロイドによる初期治療は、発症2週間以内に行う選択肢とされています。

初期治療を受けても聴力の回復が十分でない場合は、次のような救済治療が検討されます。

  • 鼓室内ステロイド治療
  • ステロイド治療と併用する高気圧酸素療法

同ガイドラインでは、鼓室内ステロイド治療は発症後26週間、高気圧酸素療法はステロイド治療との併用で、救済治療として発症後1ヶ月以内が目安とされています。

治療の適応は、現在の聴力、最初に受けた治療、持病や全身状態、実施できる医療機関などによって異なります。

2週間経っても改善がみられない場合は、そのまま様子を見るのではなく、今後の治療について早めに主治医へ相談することが大切です。

1-4.発症1ヶ月前後

発症から1ヶ月前後になると、それまでの聴力検査の変化から、今後の回復について説明を受けることがあります。

しかし、1ヶ月経った時点で聴力が完全に回復していなくても、その後の変化がすべてなくなるわけではありません。

2022年に発表された研究では、2週間の治療終了時点で聴力が完全には回復していなかった73例のうち、17例、23.3%にその後さらに聴力改善がみられました。

遅れて現れる改善の多くは、治療終了後2ヶ月までに確認されています。

この結果は、治療終了時点で回復が不十分でも、その後さらに改善する方がいることを示しています。

ただし、73例全員の23.3%に完全な回復がみられたという意味ではありません。

また、この研究結果だけで、すべての患者さんに同じ可能性が残っているとは判断できません。

現在の聴力とこれまでの変化を聴力検査で確認し、今後の対応について主治医と相談することが重要です。

1-5.発症3〜6ヶ月

発症から数ヶ月経つと、聴力の大きな変化はみられにくくなる傾向があります。

ただし、回復の程度や経過は、

  • 発症時の聴力低下の程度
  • 治療開始までの期間
  • めまいの有無
  • 年齢
  • 聴力検査の型

などによって異なります。

当院でも、発症から数ヶ月経ってから少しずつ変化がみられた患者さんを経験していますが、その多くは発症3ヶ月以内に鍼治療を開始した方です。

これは当院に来院された患者さんに関する臨床上の経験であり、突発性難聴の一般的な回復時期や、鍼治療の効果を証明するものではありません。

聴力低下が残った場合も、聞こえにくさや耳鳴りへの対応が終わるわけではありません。

必要に応じて、補聴器などを含めた聴覚リハビリテーションについて耳鼻咽喉科で相談することができます。

2.当院でみられる主な2つの回復パターン

2.当院でみられる主な2つの回復パターン

突発性難聴の回復過程に、医学的に定められた2つの分類があるわけではありません。

ここでは、当院で改善がみられた患者さんの経過を、臨床上の傾向として大きく2つに分けて説明します。

すべての方がどちらかに当てはまるわけではありませんが、経過を振り返る際の参考になります。

2-1.数日で大きく改善するパターン

当院では、発症後しばらく変化が乏しかったものの、ある時期から23日ほどで聞こえ方が大きく改善した患者さんを経験しています。

患者さんからは、

「昨日まで聞こえなかった音が聞こえるようになった」
「朝起きたら耳が軽く感じた」

といった変化を聞くことがあります。

当院の臨床経験では、このような変化は発症から2週間以内にみられることが多い印象です。

ただし、当院の患者さんは、耳鼻咽喉科での標準治療と並行して鍼治療を受けていることが多いため、どの治療がどの程度影響したのかを判断することはできません。

また、本人が大きな改善を感じていても、どの音域がどの程度改善したかは自覚症状だけでは分かりません。聴力検査で客観的に確認することが必要です。

2-2.少しずつ改善するパターン

もう1つは、小さな変化を積み重ねながら徐々に改善していくパターンです。

例えば、

  • 耳鳴りが以前より小さくなった
  • 耳の詰まった感じが軽くなった
  • 会話を聞き取りやすい場面が増えた
  • 音の響きや不快感が軽くなった

といった変化が少しずつ現れます。

改善が緩やかなため、本人には変化が分かりにくいことがあります。

この場合は、昨日と今日を比べるよりも、1週間前や2週間前と比べて変化しているかを振り返る方が分かりやすくなります。

当院の臨床経験では、このパターンでは聴力が完全には元に戻らず、一定の改善がみられた段階で変化が落ち着くケースもあります。

自覚的な変化だけで回復の程度を判断せず、耳鼻咽喉科の聴力検査と合わせて確認することが大切です。

3.改善に伴う変化と注意したい経過

3.改善に伴う変化と注意したい経過

突発性難聴では、聴力の改善に伴って、耳鳴りや耳の詰まりなどの自覚症状が変化することがあります。

ただし、自覚症状と聴力が必ず同じように変化するとは限りません。

耳鳴りが小さくなっても聴力があまり変わっていない場合や、自分では変化を感じていなくても聴力検査では改善している場合があります。

そのため、自覚症状は経過を確認する材料の1つと考え、聴力検査の結果と合わせて判断する必要があります。

3-1.改善に伴ってみられることがある変化

当院で改善がみられた患者さんでは、次のような変化が現れることがあります。

  • 耳鳴りが小さくなった
  • 耳の詰まった感じが軽くなった
  • 会話を聞き取りやすくなった
  • 音が以前より自然に聞こえるようになった
  • 音の響きや不快感が軽くなった
  • 聞こえ方に良い時間帯が現れるようになった

これらは、当院の患者さんにみられた自覚的な変化です。

このような変化があるから必ず聴力が回復するとは言えませんが、以前より良い状態が現れている場合は、その変化を記録しておくと経過を振り返りやすくなります。

聞こえ方が日によって変動する場合は、回復過程とは限りません。

急性低音障害型感音難聴やメニエール病など、別の病気でも聴力の変動がみられるため、耳鼻咽喉科で経過を確認することが大切です。

3-2.注意したい経過

次のような経過がある場合は、次回の予約日まで待たず、早めに耳鼻咽喉科へ連絡または受診してください。

  • 発症から2週間以上経っても改善がみられない
  • 治療中に聞こえがさらに悪くなった
  • 一度改善した聞こえが急に悪化した
  • めまいが強くなった
  • 反対側の耳にも聞こえにくさが現れた
  • 耳鳴りや耳の詰まりが急激に悪化した

改善がみられない場合は、追加治療を検討できる時期を逃さないためにも、現在の聴力と治療方針を確認することが重要です。

また、強いめまいに加えて、顔や手足のしびれ、ろれつの回りにくさ、激しい頭痛、歩くことが難しいなどの症状がある場合は、脳の病気を含めた確認が必要です。

速やかに医療機関を受診してください。

4.まとめ

突発性難聴の回復過程には個人差があります。

発症から早い時期に聴力改善がみられる方は、その後も良好な経過をたどりやすい傾向があります。

一方、1週間や2週間で自覚的な改善がなくても、その時点で回復の可能性がなくなったとは言えません。

当院で改善がみられた患者さんには、数日で大きく変化する方と、小さな変化を重ねながら徐々に改善する方がいます。

ただし、これらは当院の臨床経験を整理したものであり、すべての患者さんに共通する回復パターンではありません。

耳鳴りや耳の詰まり、聞き取りやすさの変化は、経過を確認する材料になります。

しかし、聴力がどの程度改善したかを判断するには、耳鼻咽喉科での聴力検査が必要です。

大切なのは、他の人の体験談だけで今後を判断せず、自分の症状と聴力検査の変化を確認することです。

思うような改善がみられない場合は、そのまま様子を見るのではなく、治療の選択肢が残されている時期に主治医へ相談しましょう。

突発性難聴発症3ヶ月以内の方へ

突発性難聴発症3ヶ月以内の方へ

突発性難聴では、まず耳鼻咽喉科で適切な診断と標準治療を受けることが重要です。

そのうえで、

「治療を受けているが、思うような変化がみられない」

「少し変化はあるが、このまま回復するのか不安」

「標準治療と並行して、ほかにできることを検討したい」

という発症3ヶ月以内の方に、当院では鍼治療を選択肢の1つとして提案しています。

鍼治療による改善を保証することはできませんが、これまでの経過や聴力検査の結果を確認したうえで、現在の状態に合わせた治療方針をご説明します。

回復過程に不安がある方は、一人で悩まず、お早めに当院へご相談ください。

参考文献

1.日本聴覚医学会 編
『急性感音難聴診療の手引き 2018年版』金原出版、2018年。

2.Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al.
Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing LossUpdate.
Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019;1611_suppl:S1-S45.

3.永井賀子、萩原晃、河口幸江、ほか
「突発性難聴における聴力改善経過と改善率に関する検討」
Audiology Japan. 2016;59
1:58-65.

4.岡本牧人、佐野肇、上條貴裕、小野雄一
「突発性難聴の社会的問題」
Audiology Japan. 2010;536:682-686.

5.Na G, Kim KW, Jung KW, et al.
Delayed Recovery in Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss.
Journal of Clinical Medicine. 2022;1110:2792.

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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