薬を飲み始めて1週間。
「今日は昨日より聞こえるかな。」
そう思いながら、毎朝起きている方もいるのではないでしょうか。
突発性難聴の治療を始めると、次に気になるのは、あとどれくらいで治るのかということです。
実際に当院でも、
「1ヶ月くらいで治りますか?」
「あと何週間くらい治療を続ければいいですか?」
というご相談をよくいただきます。
突発性難聴は、治るまでの期間に個人差が大きい病気です。
ただし、聴力の改善は発症後の早い時期に起こりやすく、特に発症から1~2週間は治療上重要な時期とされています。
一方で、1ヶ月を過ぎてから変化がみられる方や、数ヶ月かけて聞こえ方や自覚症状が少しずつ改善する方もいます。
なお、突発性難聴における「治る」には、聴力検査上の回復だけでなく、聞き取りやすさの改善、耳鳴りや耳の詰まり感の軽減など、さまざまな意味があります。
聴力と自覚症状が同じように改善するとは限りません。
この記事では、突発性難聴の聴力が改善しやすい時期、発症後の期間ごとの一般的な経過、当院でみられる回復の特徴、今できることについて解説します。
1.突発性難聴が治るまでの一般的な期間
突発性難聴の聴力が何日で回復するかは、一人ひとり異なります。
一般的には、聴力の改善は発症後の早い時期に起こりやすく、特に発症から1~2週間は重要な時期とされています。
その後も1ヶ月頃までは改善がみられることがあります。
ただし、回復までの期間は、発症から治療を開始するまでの時間だけで決まるものではありません。
回復の見通しには、主に次のような要素が関係します。
- 発症時の難聴の程度
- 低音や高音など、聞こえにくい周波数の特徴
- めまいの有無
- 年齢
- 治療開始までの期間
- 治療開始後の聴力の変化
そのため、「発症から何日経ったか」だけで、治るかどうかを判断することはできません。
また、昨日と今日の聞こえ方だけを比べていると、小さな変化に気づきにくくなります。
1週間前や1ヶ月前と比べて、電話や会話の聞き取りやすさ、耳鳴り、耳の詰まり感などがどう変化しているかを確認することが大切です。
ただし、自覚的な聞こえ方と実際の聴力が一致しないこともあります。
耳鼻咽喉科で定期的に聴力検査を受け、客観的な経過も確認しましょう。
2.発症からの期間ごとの改善の可能性
突発性難聴は、発症から時間が経つにつれて、大きな聴力回復がみられる可能性は低くなる傾向があります。
しかし、「○週間を過ぎたら、まったく改善しない」という明確な境界があるわけではありません。
ここでは、発症からの期間ごとに、一般的な経過の目安を解説します。
2-1.発症から2週間
発症直後から2週間頃までは、聴力の改善が起こりやすく、治療上も特に重要な時期です。
突発性難聴が疑われる場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査と必要な治療を受けることが大切です。
耳鼻咽喉科では、ステロイド治療を中心に、症状や全身状態に応じた治療が行われます。
必要に応じて、ステロイド治療と高気圧酸素療法の併用が検討されることもあります。
当院では、発症から2週間以内に聞こえが大きく改善した方は、その後も順調に回復するケースを経験しています。
ただし、2週間以内に大きな変化がなければ治らないという意味ではありません。自己判断で治療を中断せず、聴力検査を受けながら医師と今後の方針を相談することが重要です。
2-2.発症から2〜4週間
発症直後ほど大きな変化は起こりにくくなりますが、この時期にも聴力が改善することがあります。
聴力の変化が小さくても、
- 電話の音声が以前より分かりやすくなった
- 会話を聞き返す回数が減った
- 耳鳴りが小さく感じる時間が出てきた
- 耳の詰まり感が軽くなった
といった変化を感じる方もいます。
初回の治療で十分な改善が得られなかった場合には、発症後の期間やこれまでの治療内容に応じて、鼓室内ステロイド注射などの救済治療が検討されることがあります。
救済治療には検討される時期があるため、変化が乏しい場合も、自己判断で様子を見続けず、早めに耳鼻咽喉科へ相談しましょう。
2-3.発症から1〜3ヶ月
一般的には、発症から1ヶ月頃までに聴力の回復が落ち着く方が多くなります。
一方で、1ヶ月を過ぎてから聴力や自覚症状に変化がみられる方もいます。
当院でも、発症から1ヶ月を過ぎたあとに、聞こえ方や耳鳴り、耳の詰まり感などが少しずつ改善した患者さんを経験しています。
ただし、この時期の改善は、発症直後のように数日で大きく変化するというより、数週間から数ヶ月かけて緩やかに進むケースが多い印象です。
また、耳鳴りや耳の詰まり感などの自覚症状が軽くなっても、聴力検査の数値が同じように改善しているとは限りません。
自覚的な変化と聴力検査の両方を確認することが大切です。
2-4.発症から3〜6ヶ月
発症から3ヶ月を過ぎると、一般的には大きな聴力回復がみられるケースはさらに限られてきます。
ただし、当院では、この時期にも聞こえ方や耳鳴り、耳の詰まり感などに変化がみられた患者さんを経験しています。
これは、3~6ヶ月まで一般的に大きな聴力回復が期待できるという意味ではありません。
また、すべての方に同じような変化が起こるわけでもありません。
この時期に治療を続けるかどうかは、これまでの経過、聴力検査の結果、自覚症状の変化、日常生活への影響などを踏まえて、個別に判断する必要があります。
改善傾向がみられる場合は経過を確認しながら治療を続け、変化がみられない場合は今後の対応について見直すことも大切です。
2-5.発症から半年以降
発症から半年を過ぎると、聴力が大きく改善する可能性は一般的に低くなります。
聴力低下が残っている場合は、治療を続けることだけでなく、補聴器などを活用して日常生活の負担を減らす方法も検討します。
補聴器について考えることは、回復を諦めることではありません。
会話や仕事での聞き取りに困っている場合は、耳鼻咽喉科や補聴器外来で早めに相談することが大切です。
また、聞こえにくい側の位置を相手に伝える、会話では正面から話してもらう、周囲の雑音を減らすなど、生活環境を工夫することで負担を軽減できる場合もあります。
「半年経ったから何もできない」と考えるのではなく、その時期の聴力や症状に合った対策を選びましょう。
3.当院でみられる主な2つの回復経過
「治るまで1ヶ月くらい」と聞くと、毎日少しずつ良くなる経過を想像するかもしれません。
しかし、実際の回復の仕方は一人ひとり異なります。
当院で改善がみられた患者さんの経過には、大きく分けて次の2つの傾向があります。
3-1.短期間で大きく改善する経過
発症から2週間以内に、数日程度で聞こえ方が大きく変化するケースです。
患者さんからは、
「朝起きたら急に聞こえやすくなった。」
「数日で一気に耳が軽くなった。」
と伺うことがあります。
当院では、このように発症後の早い段階で聞こえが大きく改善した方は、その後も順調に回復するケースを経験しています。
ただし、一度大きく改善しても、聴力が完全に元へ戻ったとは限りません。
自覚的に良くなった場合も、耳鼻咽喉科で聴力検査を受け、実際の変化を確認することが大切です。
このような「急に聞こえるようになった」と感じる回復経過については、別の記事で詳しく解説しています。
3-2.数ヶ月かけて少しずつ改善する経過
もう1つは、短期間での大きな変化はないものの、数週間から数ヶ月かけて少しずつ改善していくケースです。
患者さんからは、
「先月より電話が聞き取りやすくなった。」
「家族との会話が少し楽になった。」
「耳鳴りが気にならない時間が増えた。」
といった変化を伺うことがあります。
この経過では、発症初期のような急激な改善ではなく、聴力や自覚症状が徐々に変化していくことがあります。
一方で、聴力は変わらず、耳鳴りや耳の詰まり感だけが軽減する場合もあります。
そのため、「治った」「治っていない」の2つだけで判断せず、どの症状がどの程度変化しているのかを確認することが大切です。
4.回復を待つ間にできること
突発性難聴の回復を待っている間は、「あと何日で治るのか」だけを考えるのではなく、現在の状態に応じた対応を続けることが大切です。
4-1.耳鼻咽喉科の治療と検査を継続する
まずは、耳鼻咽喉科で指示された治療を継続しましょう。
薬を自己判断で中断したり、服用方法を変更したりせず、聴力の変化や副作用が気になる場合は医師に相談してください。
初回の治療で十分な改善が得られない場合には、鼓室内ステロイド注射や高気圧酸素療法などが検討されることもあります。
治療の適応や時期は一人ひとり異なるため、担当医と相談して判断します。
また、自覚症状だけで経過を判断せず、定期的に聴力検査を受けることも重要です。
4-2.聞こえ方と症状の変化を記録する
聞こえ方は、体調や周囲の環境によっても変わって感じることがあります。
毎日の小さな変化に一喜一憂するのではなく、次のような点を簡単に記録しておくと、経過を振り返りやすくなります。
- 電話の聞き取りやすさ
- 家族との会話で聞き返す回数
- 耳鳴りの強さや変動
- 耳の詰まり感
- 音の響き方
- めまいやふらつき
- 睡眠や体調
1日ごとの変化だけでなく、1週間前や1ヶ月前と比べることが大切です。
4-3.身体への負担をできる範囲で減らす
睡眠不足や過労を避け、身体を休める時間を確保しましょう。
また、耳へ強い負担がかかるような大音量の環境は避けることが大切です。
ただし、安静や生活改善だけで突発性難聴が治るわけではありません。
生活上の工夫は耳鼻咽喉科での診察や治療の代わりにはならないため、必要な治療と並行して行います。
4-4.鍼治療という選択肢
当院では、耳鼻咽喉科での治療を優先したうえで、聞こえにくさや耳鳴り、耳の詰まり感などの改善を目指して鍼治療を行っています。
発症直後は、耳鼻咽喉科での診断と治療が最優先です。
鍼治療を受けるために、病院の受診や治療開始を遅らせてはいけません。
当院では、発症から1ヶ月を過ぎたあとに聞こえ方や自覚症状が少しずつ改善した方や、数ヶ月かけて変化がみられた方も経験しています。
ただし、これは当院における臨床経験であり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。
鍼治療による変化には個人差があり、聴力の改善を保証することはできません。
「もう治らないと言われた」「発症から時間が経ってしまった」という方は、こちらの記事もご覧ください。
5.まとめ
突発性難聴が治るまでの期間には、大きな個人差があります。
一般的には、聴力の改善は発症後の早い時期に起こりやすく、特に発症から1~2週間は治療上重要な時期です。その後も1ヶ月頃までは改善がみられることがあります。
一方で、1ヶ月を過ぎてから聞こえ方や自覚症状に変化がみられる方や、数ヶ月かけて少しずつ改善する方もいます。
ただし、発症から3ヶ月を過ぎると、大きな聴力回復がみられるケースは一般的に限られてきます。
当院で3~6ヶ月の間に変化がみられた患者さんを経験していることと、一般的な医学的経過は分けて考える必要があります。
また、聴力検査上の回復と、耳鳴りや耳の詰まり感、日常生活での聞き取りやすさの改善が一致するとは限りません。
そのため、発症からの期間だけで判断せず、定期的に聴力検査を受けながら、自覚症状を含めた経過を確認することが大切です。
耳鼻咽喉科での治療後も症状が残っている場合は、その時期にできる治療や対策について、担当医と相談しましょう。
治療を続けても聞こえが改善しない方へ
当院では、主に発症から3ヶ月以内で、耳鼻咽喉科の治療を受けても聞こえにくさや耳鳴り、耳の詰まり感が残っている方からご相談を受けています。
耳鼻咽喉科での治療を優先したうえで、鍼治療も選択肢の1つとして検討したい方は、当院へご相談ください。
現在の聴力や症状、発症からの期間、これまでに受けた治療を確認し、当院で対応できる可能性があるかをご説明します。
鍼治療による変化には個人差があり、すべての方の聴力が改善するわけではありません。
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参考文献
1. 日本聴覚医学会 編
『急性感音難聴診療の手引き 2018年版』金原出版、2018年
突発性難聴の診断と治療
予後に関係する要因
急性感音難聴の鑑別
2. Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al.
Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss(Update).
Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019;161(1_suppl):S1-S45.
発症2週間以内のステロイド治療
ステロイド治療と高気圧酸素療法の併用
鼓室内ステロイド注射による救済治療
治療後の聴力評価と聴覚リハビリテーション
3. 桑島秀、阿部俊彦、佐藤尚徳、佐藤宏昭、村井和夫
突発性難聴の予後予測に関する検討
Audiology Japan. 2004;47(2):87-91.
治療開始後の聴力変化と予後との関係
治療初期の聴力改善を確認する重要性
4. 岡本牧人、佐野肇、上條貴裕、小野雄一
突発性難聴の社会的問題
Audiology Japan. 2010;53(6):682-686.
突発性難聴646例の治療成績
治療開始時期と治療成績との関係
運営者情報
| 会社名 | 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」 |
| 代表者 | 代表取締役・院長 中石真人 |
| 経歴 | 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校
トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。 |
| 資格 | 鍼灸師・柔道整復師 |
| 創業 | 平成24年9月3日 |
| 所在地 | 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702 |
| 電話 | 050-1255-9166 |
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