「突発性難聴はどうすれば治るのだろう。」
耳鼻咽喉科を受診して薬を飲み始めたものの、
「薬を飲むだけで本当に良いのだろうか。」
「少しでも改善する可能性があるなら、ほかにできることも知りたい。」
と考えているのではないでしょうか。
突発性難聴には、自分で行えば確実に治せる方法や、すべての方に効果がある治療法はありません。
治し方の基本は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けたうえで適切な治療を開始することです。
初期治療を受けても十分に改善しない場合は、発症からの時期を考慮しながら追加治療について主治医へ相談します。
インターネットでは、食事、サプリメント、ツボ、耳を温める方法などが紹介されていますが、これらだけで突発性難聴を改善できるという十分な医学的根拠はありません。
この記事では、耳鼻咽喉科で行われる主な治療法、自分でできること、耳鼻咽喉科以外の選択肢としての鍼治療について、一般的な医学情報と当院の臨床的な見解を分けて解説します。
1.突発性難聴の治し方は早期治療が基本
突発性難聴が疑われる場合、最初に行うべきことは耳鼻咽喉科を受診することです。
突発性難聴は、片耳の聞こえが突然低下する病気ですが、耳垢や中耳炎、メニエール病、聴神経腫瘍など、ほかの原因でも似た症状が現れることがあります。
そのため、症状だけで突発性難聴と自己判断することはできません。
耳鼻咽喉科では耳の状態を確認し、聴力検査などを行って、難聴の程度や特徴を調べます。
一般に、突発性難聴は治療開始が遅くなるほど、聴力の回復が得られにくい傾向があります。
次のような症状が突然現れた場合は、様子を見続けず、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
- 片耳が急に聞こえにくくなった
- 耳が突然詰まったように感じる
- 耳鳴りとともに聞こえが低下した
- 音が響いたり、二重に聞こえたりする
- 聞こえにくさと同時に、めまいやふらつきが現れた
食事や休養だけで治そうとしたり、数日間様子を見たりすることは、治療を開始できる時期を逃すことにつながります。
まずは耳鼻咽喉科で診断と治療を受けることが、突発性難聴の治し方の基本です。
2.現在行われている主な治療法
突発性難聴には、すべての方に必ず効果がある治療法はありません。
発症からの期間、聴力低下の程度、めまいの有無、年齢、持病、全身状態などを確認しながら治療法が選択されます。
ここでは、現在行われている主な治療法について解説します。
2-1.ステロイド治療
ステロイド治療は、突発性難聴の初期治療として一般的に行われている治療です。
突発性難聴の詳しい原因は明らかになっていませんが、内耳の炎症などが関係している可能性を考え、ステロイドの抗炎症作用による回復を期待して使用されます。
主な投与方法は、内服と点滴です。
軽症から中等症では内服薬が選択されることが多く、聴力低下が大きい場合や入院が必要な場合には、点滴治療が行われることもあります。
ただし、治療方法は聴力や全身状態、持病、医療機関の方針によって異なります。
大切なのは、内服と点滴のどちらが優れているかを自己判断することではなく、耳鼻咽喉科で状態を確認してもらい、できるだけ早く治療を開始することです。
また、ステロイドには血糖値の上昇、不眠、胃の不快感などの副作用が現れることがあります。
糖尿病、高血圧、胃潰瘍などの持病がある方は、治療前に医師へ伝えてください。
処方後も、薬の量を自分で変更したり、症状が変わらないからと途中で中断したりせず、主治医の指示に従うことが重要です。
2-2.鼓室内ステロイド注射
初期治療を受けても十分な聴力回復が得られない場合に検討される治療が、鼓室内ステロイド注射です。
鼓膜を通して中耳腔にステロイドを注入し、正円窓などを介して内耳へ薬剤を届けることを目的としています。
全身への影響を抑えながら、内耳周辺へ高い濃度の薬剤を届けられることが特徴です。
初期治療で十分な回復がみられない場合の救済治療として位置付けられており、全身へのステロイド投与が難しい方に検討されることもあります。
米国の診療ガイドラインでは、初期治療後も十分な回復が得られない場合、発症から2~6週間で鼓室内ステロイド治療を提示することが推奨されています。
ただし、実際の適応や治療時期は症状や全身状態によって異なります。
局所麻酔を使用して行われることが多いものの、治療中の痛みや不快感、一時的なめまいなどが現れる場合があります。
初期治療後の聴力が十分に戻っていない場合は、「もう遅い」と自己判断せず、適応や治療時期について早めに主治医へ相談してください。
2-3.高気圧酸素療法
高気圧酸素療法は、高い気圧に設定された装置の中で、高濃度の酸素を吸入する治療です。
高い気圧の環境では、通常より多くの酸素が血液中に溶け込みます。これにより、内耳への酸素供給を増やすことが期待されています。
突発性難聴では、ステロイド治療と併用して行われることがあり、一般に発症から早い時期ほど検討されやすい治療です。
治療回数や頻度は、症状や医療機関の方針によって異なります。
連日の通院が必要になることもあるため、治療内容だけでなく、通院できるかどうかも含めて確認する必要があります。
また、すべての医療機関で受けられる治療ではありません。
希望する場合は、現在通院している耳鼻咽喉科で適応や実施施設について相談してください。
2-4.鍼治療
耳鼻咽喉科での治療に加えて、鍼治療を検討される方もいます。
突発性難聴に対する鍼治療については複数の研究がありますが、研究方法や施術内容にばらつきがあり、有効性が確立しているとはいえません。
そのため、当院では鍼治療を耳鼻咽喉科の標準治療に代わるものとは考えていません。まず耳鼻咽喉科で必要な検査と治療を受けることが前提です。
そのうえで当院では、耳の症状だけでなく、次のような身体の状態も確認して施術を行っています。
- 頸部や肩周囲の筋緊張
- 頭痛や顎周囲の緊張
- 睡眠や疲労の状態
- めまいやふらつきの有無
- そのほかの全身状態
耳鼻咽喉科での治療を継続しながら鍼治療を併用し、その後、聴力や耳鳴り、耳の詰まりなどに変化がみられた患者さんを当院でも経験しています。
ただし、鍼治療を受けたことが改善の直接的な理由であると断定することはできません。
改善の程度や経過には個人差があり、鍼治療を受けても十分な変化が得られない場合もあります。
鍼治療は、標準治療を受けたうえで、ほかにできることを探している方が検討する補完的な選択肢の一つです。
3.改善のために自分でできること
突発性難聴を食事やセルフケアだけで確実に改善させる方法はありません。
一方で、治療を適切に受け、体調を管理するために自分でできることはあります。
3-1.処方された薬を自己判断で変更しない
薬を飲んでもすぐに聞こえが変わらないからといって、自己判断で中断したり、量を変更したりしないでください。
薬の効果や副作用について不安がある場合は、処方した医師へ相談します。
また、初期治療後も聞こえにくさが残っている場合は、そのまま様子を見るのではなく、聴力検査を受け、追加治療の適応について確認することが大切です。
3-2.過労や睡眠不足を避ける
休養や睡眠だけで突発性難聴が治るという医学的根拠はありません。
しかし、発症後も過度な仕事や睡眠不足が続くと、治療中の身体的・精神的な負担が大きくなります。
治療期間中は無理を続けず、可能な範囲で休養と睡眠を確保してください。
仕事を休む必要があるか、運動や飲酒をどの程度控えるべきかは、症状や治療内容によって異なります。生活上の制限については主治医へ確認しましょう。
3-3.症状の変化を記録する
突発性難聴の回復は、すべての症状が同時に変化するとは限りません。
例えば、
- 耳鳴りの音や大きさが変わった
- 朝や夜など、時間帯によって聞こえ方が違う
- 電話の声が以前より聞き取りやすくなった
- 音の響きや耳の詰まりが軽くなった
- めまいやふらつきが減ってきた
など、自覚症状に変化が現れることがあります。
こうした変化を記録しておくと、診察時に経過を伝えやすくなります。
ただし、自覚的に聞こえやすくなったと感じても、実際の聴力がどの程度変化したかは感覚だけでは判断できません。
耳鼻咽喉科で聴力検査を受け、客観的な変化も確認することが大切です。
3-4.追加治療は主治医と相談して選ぶ
初期治療で十分な改善が得られない場合は、鼓室内ステロイド注射や高気圧酸素療法など、次に検討できる治療があるか主治医へ確認します。
大切なのは、受けられる治療をすべて行うことではありません。
それぞれの治療には、適応となる時期、期待できる効果、身体的な負担、通院回数、費用などの違いがあります。
説明を受けたうえで、自分の症状や希望に合った治療を選択してください。
4.治療中に大切にしたい3つのこと
突発性難聴は、同じ時期に同じ治療を受けても、回復の程度に個人差があります。
治療の結果は、患者さんの努力だけで決まるものではありません。
発症時の聴力、年齢、めまいの有無、聴力の低下している音域、治療開始時期など、さまざまな要因が関係します。
その前提を踏まえたうえで、治療中に大切にしたいことを整理します。
4-1.早い段階で治療を開始する
最も優先すべきことは、早期に耳鼻咽喉科を受診し、必要な治療を開始することです。
発症直後であれば、まず標準治療を優先します。
初期治療後も改善が十分でなければ、時期を逃さず追加治療について相談します。
ただし、早く治療を始めても、必ず聴力が元どおりになるわけではありません。
十分に改善しなかった場合でも、ご自身の行動が悪かったということではありません。
4-2.治療の目的を理解して選択する
ステロイド治療、鼓室内ステロイド注射、高気圧酸素療法、鍼治療は、それぞれ位置付けや医学的根拠が異なります。
治療を多く受けるほど改善しやすいとは限りません。
治療の目的、適応となる時期、期待できる効果、考えられる負担について説明を受け、納得したうえで選択することが大切です。
4-3.小さな変化と聴力検査の両方を確認する
当院の臨床経験では、耳鳴りの音、耳の詰まり、音の響き、時間帯による聞こえ方などに小さな変化が現れ、その後も症状が変化していく患者さんがいます。
特に、耳鳴りや聞こえ方に日差や日内変動がある方では、その後も変化がみられることがあります。
一方、こうした自覚症状だけで、その後の聴力回復を予測することはできません。
自覚症状に変化があっても聴力検査では変化が乏しい場合があり、その反対もあります。
そのため当院では、「聞こえる・聞こえない」だけでなく、耳鳴り、耳の詰まり、音の響き、日常生活での聞き取り方なども確認しています。
同時に、耳鼻咽喉科で定期的に聴力検査を受けることも大切だと考えています。
長期間にわたって聴力や症状に変化がみられない場合は、同じ治療を漫然と続けるのではなく、今後の治療方針について改めて相談する必要があります。
5.まとめ
突発性難聴には、これをすれば必ず治るという治療法はありません。
改善を目指すうえで最も重要なのは、突然の聞こえにくさを放置せず、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することです。
突発性難聴と診断された場合は、主治医の指示に従って初期治療を受けます。
治療後も十分な回復がみられない場合は、聴力検査で状態を確認し、鼓室内ステロイド注射や高気圧酸素療法などの追加治療について相談します。
鍼治療は、耳鼻咽喉科の標準治療に代わるものではありません。
標準治療を受けたうえで、ほかにできることを探している方が検討する補完的な選択肢の一つです。
また、治療を多く受ければ必ず改善するわけではありません。
それぞれの治療の目的や負担を理解し、自分の症状や発症からの期間に合った治療を選択することが大切です。
自覚症状の小さな変化も記録しながら、耳鼻咽喉科の聴力検査で客観的な経過を確認していきましょう。
突発性難聴でお悩みの方へ
突発性難聴は、まず耳鼻咽喉科で必要な検査と治療を受けることが大切です。
当院では、耳鼻咽喉科での治療経過や聴力検査の結果、現在の症状を確認したうえで、一人ひとりの状態に合わせた施術を行っています。
鍼治療による改善を保証することはできませんが、標準治療を受けたうえで、ほかにできることも検討したい方のご相談を受け付けています。
発症から3ヶ月以内で、改善を諦めずに取り組みたい方は、当院へご相談ください。
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参考文献
1. 日本聴覚医学会編.『急性感音難聴診療の手引き 2018年版』金原出版.2018.
2. Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss(Update). Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019;161(1_suppl):S1-S45.
3. Mirian C, Ovesen T. Intratympanic vs Systemic Corticosteroids in First-line Treatment of Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery. 2020;146(5):421-428.
4. Plontke SK, Meisner C, Agrawal S, et al. Intratympanic corticosteroids for sudden sensorineural hearing loss. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2022;7(7):CD008080.
5. Na G, Kim KW, Jung KW, et al. Delayed Recovery in Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss. Journal of Clinical Medicine. 2022;11(10):2792.
運営者情報
| 会社名 | 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」 |
| 代表者 | 代表取締役・院長 中石真人 |
| 経歴 | 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校
トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。 |
| 資格 | 鍼灸師・柔道整復師 |
| 創業 | 平成24年9月3日 |
| 所在地 | 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702 |
| 電話 | 050-1255-9166 |
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