突発性難聴でステロイドが効かない|理由と次の治療法

突発性難聴でステロイドが効かない|理由と次の治療法

ステロイドを飲み始めて数日、あるいは点滴治療を受けたものの、

「ほとんど聞こえが変わらない。」

「このまま治らないのではないか。」

と不安を感じているのではないでしょうか。

インターネットで「ステロイドが効かなかった」「もう改善は難しい」といった体験談を目にし、さらに不安が大きくなっている方もいると思います。

実際に当院へ来院される患者さんからも、

「ステロイドが効いていないように感じます。」

「ほかに改善する方法はありませんか。」

というご相談をいただきます。

しかし、治療を始めて数日間変化がないという理由だけで、ステロイドが効かなかったと判断することはできません。

また、十分な改善が得られなかった場合でも、発症からの期間によっては、鼓室内ステロイド注射や高気圧酸素療法などの追加治療が検討されることがあります。

この記事では、ステロイドの効果を判断する時期、改善が得られにくい要因、追加治療の選択肢、当院における鍼治療の考え方について解説します。

1.ステロイドの効果を判断する時期

1.ステロイドの効果を判断する時期

1-1.治療開始直後では判断できない

ステロイド治療を始めて数日経っても聞こえに変化がないと、薬が効いていないのではないかと不安になると思います。

しかし、治療開始から数日間変化がないという理由だけで、最終的な治療効果を判断するのは早い場合があります。

突発性難聴は、ステロイドを使用するとすぐに聴力が回復するとは限りません。

改善の程度や時期には個人差があり、

  • 数日後から少しずつ改善する方
  • 1~2週間かけて回復する方
  • 初期治療の終了後にも、経過の中で改善がみられる方

など、さまざまな経過をたどります。

そのため、治療開始直後に変化がなくても、自己判断でステロイドを中止したり、服用量を変更したりしてはいけません。

まずは主治医の指示どおりに治療を続けることが大切です。

1-2.聴力検査で経過を確認する

ステロイドの効果は、聞こえの感覚だけではなく、聴力検査の結果も含めて判断します。

耳鳴りや耳の詰まりが残っていても聴力が改善している場合がある一方で、聞こえに慣れたことで改善したように感じても、聴力検査では大きな変化がみられない場合があります。

初期治療が一段落する時期には、治療前後の聴力を比較し、どの程度改善しているかを確認します。

発症から2週間前後は、初期治療の効果を確認するとともに、改善が十分でない場合に追加治療を検討する重要な時期です。

ただし、発症から2週間でステロイドが効かなかったと確定するわけではありません。

治療開始から数週間後や、標準治療の終了後に聴力が改善する方も報告されています。

当院でも、病院でのステロイド治療後に鍼治療を開始し、その後少しずつ聞こえが改善した方を経験しています。

2週間経ったからもう治らないと考える必要はありませんが、発症から時間が経つほど改善しにくくなる傾向があります。

追加治療を受けられる時期を逃さないためにも、聴力の変化が乏しい場合は早めに主治医へ相談しましょう。

2.改善が得られにくい要因

2.改善が得られにくい要因

ステロイド治療を受けても聴力が回復しなかったからといって、薬がまったく作用しなかったと断定できるわけではありません。

突発性難聴には自然に回復する方もいるため、個々の患者さんについて「ステロイドによって改善したのか」「治療を受けなくても同じように改善したのか」を厳密に判断することは困難です。

また、ステロイドへの反応だけではなく、突発性難聴そのものの回復しやすさに関係する要因があります。

2-1.治療開始までに時間が経っていた

突発性難聴は、発症から治療開始までの期間が長くなるほど、聴力が回復しにくい傾向があります。

そのため、耳の聞こえにくさや耳の詰まりなどを感じた場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

一方で、発症から数週間経って治療を開始したからといって、改善の可能性がなくなるわけではありません。

治療開始が遅れた場合でも、現在の聴力や発症からの期間を確認し、受けられる治療があるか主治医へ相談することが大切です。

2-2.初診時の難聴が重かった

初診時の難聴が重い方ほど、改善率が低くなる傾向があります。

ただし、重症だからステロイドが効かないというわけではありません。

高度難聴でも大きく改善する方がいる一方で、比較的軽度の難聴でも十分な改善が得られない方がいます。

現在の医学でも、同じような聴力低下がある方の中で、なぜ回復する方と回復しない方がいるのかは完全には分かっていません。

そのため、初診時の聴力だけで、その後の経過を決めつけることはできません。

2-3.めまいを伴っていた

突発性難聴にめまいを伴う場合は、めまいを伴わない場合と比べて、聴力の改善率が低い傾向があります。

これは、聞こえを担う蝸牛だけではなく、平衡感覚を担う前庭にも障害が及んでいる可能性があるためと考えられています。

ただし、めまいを伴っていても聴力が改善する方はいます。

めまいの有無は予後を予測する要因の一つであり、それだけで治療効果や今後の経過が決まるわけではありません。

2-4.複数の要因が関係していた

突発性難聴の回復には、

  • 治療開始までの期間
  • 初診時の聴力
  • めまいの有無
  • 年齢

など、複数の要因が関係すると考えられています。

また、持病や副作用などにより、ステロイドの投与方法や投与量が調整される場合もあります。

ただし、これらはあくまでも改善率に影響するとされる要因です。

一つでも当てはまれば改善しない、反対に当てはまらなければ必ず改善するというものではありません。

十分な改善が得られなかった理由を個別に特定できないこともあるため、現在の状態だけで判断せず、発症からの期間や聴力検査の結果、これまでの治療経過を踏まえて、次の治療方針を検討することが重要です。

3.ステロイドで改善しない場合の追加治療

3.ステロイドで改善しない場合の追加治療

ステロイド治療で十分な改善が得られなかった場合でも、それで治療が終わるとは限りません。

発症からの期間や聴力の状態によっては、医療機関で追加治療が検討されることがあります。

3-1.鼓室内ステロイド注射

鼓室内ステロイド注射は、鼓膜を通して中耳にステロイドを注入し、薬剤を内耳へ移行させることを目的とした治療です。

日本の診療の手引きやアメリカ耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会のガイドラインでも、初回のステロイド治療で十分な改善が得られなかった場合に検討される治療として示されています。

アメリカのガイドラインでは、発症から2~6週間の間に聴力の回復が不十分な場合、鼓室内ステロイド注射を救済治療として行うことが推奨されています。

実際に治療を行うかどうかは、聴力の程度、発症からの期間、これまでの治療内容、持病などを踏まえて主治医が判断します。

すべての方に効果があるわけではありませんが、受けられる時期が限られるため、初期治療後も改善が乏しい場合は早めに相談することが大切です。

3-2.高気圧酸素療法

高気圧酸素療法は、高い気圧の環境で高濃度の酸素を吸入し、内耳への酸素供給を増やすことを目的とした治療です。

ステロイド治療と併用して行われることがあり、一般的には発症から早い時期に開始した方が効果を得やすいとされています。

アメリカのガイドラインでは、ステロイドとの併用による初期治療は発症から2週間以内、救済治療は発症から1ヶ月以内の選択肢として示されています。

ただし、すべての医療機関で受けられる治療ではなく、高気圧酸素治療装置のある病院に限られます。

また、症状や持病によっては適さない場合もあります。

治療を希望する場合は、適応や開始時期について主治医へ早めに相談しましょう。

4.当院における鍼治療の考え方

4.当院における鍼治療の考え方

当院では、病院でのステロイド治療後も十分な改善が得られない方に対して鍼治療を行っています。

鍼治療は、ステロイドや鼓室内ステロイド注射、高気圧酸素療法の代わりとなる治療ではありません。

発症から時間があまり経っていない場合は、まず耳鼻咽喉科で追加治療について相談することが重要です。

当院でも、病院での治療を妨げないことを前提として鍼治療を行います。

施術前には、発症からの期間、聴力検査の結果、治療経過、耳鳴りやめまいの状態などを確認します。また、首や肩周囲の筋緊張、体調なども含めて評価し、一人ひとりの状態に合わせて施術を行います。

実際に当院では、

  • ステロイド治療後も聴力の変化が乏しかった方
  • 病院でこれ以上の治療は難しいと説明を受けた方

が、鍼治療を開始した後に少しずつ改善したケースを経験しています。

これは当院における臨床経験であり、すべての方に同じ改善がみられるわけではありません。

また、鍼治療が聴力改善にどの程度影響したかを、個々のケースで厳密に証明することはできません。

当院では、これまでの臨床経験から、発症から3ヶ月以内を鍼治療について相談いただく一つの目安としています。

ステロイド治療で十分な改善が得られなかった場合でも、発症からの期間や現在の状態によっては、当院で対応できる可能性があります。

5.まとめ

ステロイドは、突発性難聴の初期治療として一般的に用いられています。

治療を始めて数日間変化がなくても、その時点でステロイドが効かなかったと判断するのは早い場合があります。

自己判断で薬を中止せず、主治医の指示どおりに治療を続けましょう。

初期治療後は、聞こえの感覚だけではなく、聴力検査で治療前後の変化を確認することが重要です。

十分な改善が得られなかった場合は、発症からの期間や聴力の状態によって、鼓室内ステロイド注射や高気圧酸素療法などが検討されることがあります。

一方で、追加治療を受けられる時期には限りがあります。

「ステロイドが効かなかったからもう治らない」と自己判断せず、まずは主治医に現在の聴力と追加治療について確認することが大切です。

ステロイド治療で改善しない方へ

ステロイド治療で改善しない方へ

当院では、病院でのステロイド治療後も十分な改善が得られない方に対して、これまでの治療経過や聴力検査の結果、耳鳴り、めまい、首や肩周囲の状態などを確認し、一人ひとりに合わせた鍼治療を行っています。

鍼治療は病院で行われる治療の代わりではありませんが、当院では発症から3ヶ月以内を相談いただく一つの目安としています。

「ステロイドが効かなかったからもう治らない」と諦める前に、一度当院へご相談ください。

参考文献

1.日本聴覚医学会 編.急性感音難聴診療の手引き 2023年版.日本聴覚医学会.

2.Chandrasekhar SS, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss(Update). Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019.

3.Gao W, et al. Prognostic Factors in Sudden Sensorineural Hearing Loss: A Retrospective Study Using Interaction Effects. Brazilian Journal of Otorhinolaryngology. 2017.

4.Kim YH, et al. Delayed Recovery in Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss. Journal of Clinical Medicine. 2022.

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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