突発性難聴の診断基準とは?30dB・3周波数・72時間の基準を解説

突発性難聴の診断基準とは?30dB・3周波数・72時間の基準を解説

「突然、片耳が聞こえにくくなった」「耳鼻咽喉科で突発性難聴の疑いと言われたけれど、診断の根拠が分からない」

このようなとき、聴力検査の結果を見て、自分が診断基準に当てはまるのか確かめたくなるかもしれません。

突発性難聴には、発症の仕方や難聴の種類、原因についての診断基準があります。

「30dB・3周波数・72時間」という数値も判断の参考になりますが、それだけで診断が決まるわけではありません。

この記事では、日本の診断基準を一つずつ説明し、軽度の難聴や診断名がはっきりしない場合にどう考えればよいかも整理します。

1.突発性難聴の診断基準

1.突発性難聴の診断基準

厚生労働省の研究班が2015年に改定した診断基準では、突発性難聴の主症状として、次の3項目が示されています。

  1. 突然発症
  2. 高度感音難聴
  3. 原因不明

診断の基準は、主症状の全項目を満たすことです。

また、診断時の参考事項には、純音聴力検査で「隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が、72時間以内に生じた」という目安が記載されています。

主症状と参考事項は、同じ位置づけではありません。

このため、検査結果に30dB以上の値があるだけで「突発性難聴で確定」とは言えません。

反対に、手元の検査結果を見て数値に当てはまらないと思っても、急な聞こえ方の変化を自己判断で放置しないことが大切です。

2.診断基準の3項目を分かりやすく解説

2.診断基準の3項目を分かりやすく解説

2-1.突然発症

「突然発症」とは、聞こえ方の変化が急に起こることです。

例えば、朝起きたら片耳が聞こえにくくなっていた、ある時点から急に音が小さく感じられた、といった経過が典型的です。

誰もが発症した瞬間を正確に言えるわけではありません。

診断基準の参考事項にも、数日かけて悪化する例があると記載されています。

医師は「何日の何時に始まったか」だけでなく、以前の聞こえ方との違いや、その後の変化も確認します。

2-2.高度感音難聴

「感音難聴」は、主に内耳や音を伝える神経などに関係する難聴です。

耳垢や中耳の病気など、音が内耳に届くまでの経路に問題がある「伝音難聴」とは区別します。

聞こえにくいという自覚だけでは、そのどちらかは判断できません。

基準には「高度感音難聴」と書かれていますが、ここにある「高度」という言葉だけで、別に定められた難聴の重症度分類へ機械的に当てはめることはできません。

聴力検査では、どの高さの音が、どの程度聞こえにくいかを調べ、発症時の状況などと合わせて評価します。

比較的軽い聞こえにくさだからといって、耳鼻咽喉科での評価が不要になるわけではありません。

2-3.原因不明

突発性難聴の「原因不明」とは、難聴を起こした原因を診察や検査で特定できないという意味です。

「原因が存在しない」「検査をしなくてもよい」という意味ではありません。

急に聞こえにくくなる病気は突発性難聴だけではありません。

医師は耳の状態や聴力検査の結果、発症前後の出来事などを確認し、原因が明らかな難聴や、別の病気で説明できる難聴がないかを検討します。

そのうえで原因を特定できないことが、診断の重要な要素になります。

原因についてさらに知りたい方は、【突発性難聴の原因は?ストレスやイヤホンとの関係も解説】をご覧ください。

3.「30dB・3周波数・72時間」とは何を意味するのか

3.「30dB・3周波数・72時間」とは何を意味するのか

3-1.隣り合う3周波数で各30dB以上

聴力検査では、低い音から高い音まで、音の高さごとに聞こえる大きさを調べます。

「周波数」は音の高さを表し、「dB」は検査でどの程度の大きさの音が聞こえたかを表します。

数値が大きいほど、より大きな音でなければ聞こえない状態です。

参考事項にあるのは、隣り合う3つの音の高さで、それぞれ30dB以上の難聴があるという目安です。

例えば、隣り合う3つの周波数で40dB・35dB・30dBという結果なら、数値の部分に当てはまります。

一方、離れた周波数に30dB以上の値が3つあるだけでは、「隣り合う3周波数」とは同じ意味になりません。

また、これは「平均聴力が30dB以上」という意味でもありません。

検査結果を確かめるときは、平均値だけでなく、どの周波数で変化があるかを見る必要があります。

診断時には、以前からの難聴との違いや反対側の耳の状態も含め、医師が判断します。

3-2.72時間以内

「72時間以内」は、難聴が生じるまでの時間経過を指します。

「発症から72時間以内でなければ受診できない」という期限ではありません。

例えば、ある日から急に聞こえにくくなった場合、その急な発症の仕方が判断材料になります。

すでに72時間以上たっていても、受診する意味がなくなるわけではありません。

いつ気付いたか、どのように変化したかを耳鼻咽喉科で伝えてください。

3-3.30dB未満なら違うのか

聴力検査の一部が30dB未満だからといって、「突発性難聴ではないので何もしなくてよい」とは判断できません。

一方で、「30dB未満でも必ず突発性難聴だ」とも言えません。

30dB・3周波数・72時間は診断基準の参考事項です。

医師は難聴の種類、音の高さごとの結果、急に起きた変化かどうか、ほかの病気の可能性などを合わせて評価します。

自分の検査結果が基準に当てはまるか迷う場合は、数値だけで病名を決めず、検査を担当した医師に「どの周波数が変化しているか」「現在の診断名とその根拠」を確認するとよいでしょう。

4.耳鳴り・耳のつまり・めまいと診断基準の関係

4.耳鳴り・耳のつまり・めまいと診断基準の関係

突然の聞こえにくさに加えて、耳鳴りやめまいを感じることがあります。

診断基準でも、耳鳴り、めまい、吐き気などは参考事項として挙げられています。

これらは主症状の3項目とは異なり、耳鳴りやめまいがなければ突発性難聴ではない、という意味ではありません。

また、「耳が詰まった感じ」は患者さんにとって気付きやすい症状ですが、それだけで難聴の種類や病名は分かりません。

耳鳴りがあるから突発性難聴、めまいがないから軽い病気、と症状を一つずつ当てはめて判断しないことが大切です。

症状全体については【突発性難聴の症状|聞こえ方・耳鳴り・耳のつまり・めまいを解説】、気付き始めの変化については【突発性難聴の初期症状|耳の違和感・つまり・耳鳴りを放置しないために】で詳しく説明しています。

5.実際にはどのように突発性難聴を診断するのか

5.実際にはどのように突発性難聴を診断するのか

5-1.発症時期と症状を確認する

診察ではまず、いつ聞こえ方が変わったか、片耳か両耳か、変化は一度に起きたか、耳鳴りやめまいを伴うかなどを確認します。

以前から難聴があったか、症状を繰り返していないかも判断材料です。

発症時刻を正確に覚えていなくても、「前日の夜は普段どおりだったが、朝起きたら聞こえにくかった」のように、分かる範囲で伝えてください。

以前の聴力検査結果があれば、今回の変化を確認する助けになります。

5-2.耳の診察と聴力検査を行う

次に耳の中を診察し、外耳や中耳に聞こえにくさの原因がないかを調べます。

純音聴力検査では、音の高さごとの聞こえ方と、難聴の程度を確認します。

検査結果から、音が伝わる経路に問題がある伝音難聴か、内耳などに関係する感音難聴かも評価します。

この段階で見るのは、単に「30dBを超えたか」だけではありません。

左右差や、低い音と高い音のどちらに変化があるかも、診断やほかの病気との区別に関わります。

検査全体の流れは【突発性難聴ではどんな検査をする?検査方法と診断までの流れを解説】、結果の読み方は【突発性難聴の聴力検査|グラフの見方と検査結果からわかること】で詳しく説明しています。

5-3.必要に応じてほかの病気がないか調べる

問診、耳の診察、聴力検査だけで判断しきれない場合は、言葉の聞き取りを調べる検査、平衡機能の検査、MRIなどが検討されます。

全員が同じ検査を受けるわけではなく、症状や診察結果によって必要な検査は変わります。

MRIは、突発性難聴そのものを画像に映して確定するための検査ではありません。

聞こえに関係する神経の腫瘍など、別の原因を調べる目的で行われることがあります。

6.突発性難聴と似た病気との区別も必要

6.突発性難聴と似た病気との区別も必要

急に耳の聞こえ方が変わっても、原因が必ず突発性難聴とは限りません。

例えば、低い音を中心に聞こえにくくなる急性低音障害型感音難聴、めまいの発作などを伴うメニエール病、内耳に関係する外リンパ瘻、聞こえに関係する神経に生じる聴神経腫瘍などが検討される場合があります。

これらは症状が一部重なるため、「耳鳴りがある」「耳が詰まる」「片耳だけ聞こえにくい」といった特徴だけで区別できません。

とくに急性低音障害型感音難聴は、聴力検査の数値だけを見れば、突発性難聴の参考事項と重なる場合があります。

診断基準でも、この病気と診断される例は除外するとされています。

病名を区別するのは、適切な検査や治療方針を考えるためです。

自分でどの病気か決める必要はありませんが、症状が始まった時期や変化を医師に伝えることは役立ちます。

7.軽度の難聴では診断が分かりにくいこともある

7.軽度の難聴では診断が分かりにくいこともある

聞こえにくさが比較的軽いと、「会話はできるのに難聴なのか」「検査結果は診断基準に届いているのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。

当院では、比較的軽度の難聴で耳鼻咽喉科を受診したものの、「自分が突発性難聴なのか、ほかの難聴なのか分からない」と話される方が来院することがあります。

これはなかいし鍼灸院に来院された方の訴えであり、軽度の難聴全般について診断がつかない、という意味ではありません。

診断には、聴力検査の数値だけでなく、急な発症だったか、どの音が聞こえにくいか、その後に変化があったか、別の病気に当てはまらないかといった判断が関わります。

その説明を受けても、患者さんには診断名や判断の根拠がつかみにくい場合があります。

診断について分からない点があれば、「現在の診断名は何か」「突発性難聴の疑いなのか」「どの検査結果や経過からそう判断したのか」を担当医に確認してください。

診断基準の数値を自分で当てはめるより、今の状態と今後の方針を理解しやすくなります。

8.聞こえ方が急に変わったら耳鼻咽喉科へ

8.聞こえ方が急に変わったら耳鼻咽喉科へ

診断基準は、検査結果や医師の説明を理解する助けになります。

症状や数値だけで突発性難聴かどうかを自己判断するためのものではありません。

急に片耳が聞こえにくくなった、耳が詰まった感じとともに聞こえ方が変わったなど、それまでと明らかに違う変化があれば、軽く感じても早めに耳鼻咽喉科へ相談してください。

72時間を過ぎている場合も、受診をあきらめる理由にはなりません。

診察と聴力検査を受けることで、どのような難聴が起きているか、治療や追加検査が必要かを確認できます。

9.突発性難聴と診断された後の治療と当院の考え方

9.突発性難聴と診断された後の治療と当院の考え方

突発性難聴と診断された場合は、まず耳鼻咽喉科の医師と治療方針を確認し、指示に沿って治療を受けてください。

診断名がまだはっきりしない場合も、必要な再診や追加検査の予定を確認することが大切です。

広島のなかいし鍼灸院では、耳鼻咽喉科で診断や治療を受けたうえで、聞こえにくさや耳鳴りなどが残り、鍼治療も検討されている方からの相談を受けています。

鍼灸院で突発性難聴を確定診断することはできず、鍼治療による改善を保証するものでもありません。

病院での診断・治療を続けながら、ご自身の状態に合わせた相談先を考える際の選択肢としてお読みください。

病院で行われる治療の内容を詳しく知りたい方は、【突発性難聴の治療|ステロイド・高気圧酸素療法・鍼治療を解説】、【突発性難聴のステロイド治療|効果や副作用を解説】をご覧ください。

10.まとめ

日本の突発性難聴の診断基準では、「突然発症」「高度感音難聴」「原因不明」の3項目が主症状です。

「隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が72時間以内に生じた」という数値は、診断時の参考事項として示されています。

耳鳴りやめまいを伴うこともありますが、その有無だけで病名は決まりません。

最も大切なのは、数値を自分に当てはめて受診の要否を決めないことです。

聞こえ方が急に変わったら、耳鼻咽喉科で診察と聴力検査を受けてください。

すでに受診していて診断名が分からない場合は、担当医に現在の診断と判断の根拠を確認しましょう。

突発性難聴でお悩みの方へ

突発性難聴でお悩みの方へ

耳鼻咽喉科で突発性難聴と診断され、治療を受けているものの、「聞こえにくさや耳鳴りが残っている」「病院の治療と並行して鍼治療も検討したい」とお考えの方は、広島のなかいし鍼灸院へご相談ください。

特に発症から3ヶ月以内の方は、現在の症状や治療の経過をお知らせください。

LINEでは、発症した時期、耳鼻咽喉科で伝えられた診断名、これまでに受けた治療、現在困っている症状を、分かる範囲でお送りください。

聴力検査の結果がお手元にあれば、その画像も添えていただくと、経過を確認する参考になります。

いただいた内容をもとに、当院での鍼治療の考え方や通院についてご案内します。

鍼治療による聴力の回復や症状の改善を保証するものではありません。

病院での治療・再診を続けながら、ご自身の状態に合った選択肢を一緒に考えていきます。

参考文献

1.日本聴覚医学会編『急性感音難聴診療の手引き 2018年版』「突発性難聴 診断基準」。厚生労働省「難治性聴覚障害に関する調査研究班」による2015年改定の診断基準を収載。https://audiology-japan.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/Web公開用PDFファイル;急性感音難聴診療の手引き2018年版.pdf

2.American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update). 2019. 早期評価や鑑別に関する補助資料として参照。本文の日本国内の診断基準は[1]に基づきます。https://www.entnet.org/quality-practice/quality-products/clinical-practice-guidelines/sudden-hearing-loss-update/

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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