突発性難聴は1年後でも回復する?聴力が戻る可能性と今後の対応を解説

突発性難聴は1年後でも回復する?聴力が戻る可能性と今後の対応を解説

突発性難聴の発症から1年が経ち、聞こえにくさや耳鳴りが残っていると、「今からでも聴力が戻ることはあるのか」「別の治療を試した方がよいのか」と迷うことがあるでしょう。

病院で「聴力は固定しています」と説明されても、インターネットで回復した体験談を読むと、判断が揺れるかもしれません。

発症から1年が経ち、聴力検査の結果も長く変わっていない場合、そこから聴力そのものが大きく回復することは、一般に期待しにくいと考えられます。

一方、耳鳴りの気になり方や日常生活での聞き取りやすさは、聴力とは分けて考える必要があります。

この記事では、突発性難聴の1年後の回復可能性、「聴力が戻ること」と「症状が楽になること」の違い、再受診が必要な変化、今後検討したい対応について、医学的な情報と当院の臨床経験を分けて解説します。

1.突発性難聴の1年後の回復可能性

1.突発性難聴の1年後の回復可能性

1-1.1年後の聴力回復は一般に期待しにくい

突発性難聴の発症から1年が経過し、その間の聴力検査でも改善が見られていない場合、今後の大きな聴力回復を前提に治療を続けることには慎重な判断が必要です。

突発性難聴の患者さんを5年以上観察した研究では、対象となった153例のうち、長期経過中に聴力の変化が認められた28例は、いずれも悪化方向の変化でした。

この研究では、長期経過中の聴力改善は確認されませんでした。

この研究は、発症1年後の患者さん全員について回復可能性を調べたものではありません。

そのため、「1年経ったら絶対に治らない」とまで断定する根拠にはなりません。

個人の見通しは、これまでの聴力検査の推移や診断内容も含めて考える必要があります。

インターネットで「1年以上経ってから回復した」という症例や体験談を見つけたときも、それだけで自分にも同じ結果が期待できるとは判断できません。

実際に聴力検査の数値が改善したのか、耳鳴りが楽になったのか、補聴器などで聞き取りやすくなったのかによって、「回復」の意味が異なるからです。

1-2.「回復した」と感じても聴力が戻ったとは限らない

聞こえに関する変化を判断するときは、次の3つを分けると整理しやすくなります。

変化の種類

確認すること

聴力そのものの変化

聴力検査で、以前より小さな音が聞こえるようになったか

自覚症状の変化

耳鳴り、耳のつまり、音の響きなどが軽くなったか

生活上の聞き取りの変化

会話の工夫や補聴器などにより、日常生活で聞き取りやすくなったか

例えば、耳鳴りが以前ほど気にならなくなれば、「耳の状態が良くなった」と感じることがあります。

静かな場所で会話するようになり、聞き返す回数が減った場合も、生活上は大切な変化です。

こうした変化を否定する必要はありません。

本人の負担が減ることには意味がありますが、それを聴力検査で確認する聴力回復と同じ意味で扱わないことが大切です。

「最近、少し聞こえやすくなった」と感じた場合は、その感覚を診察で伝え、必要に応じて過去の聴力検査と比較してもらいましょう。

2.突発性難聴の回復の時間軸

2.突発性難聴の回復の時間軸

2-1.聴力の変化は発症後の早い時期に集中する

突発性難聴では、発症後の早い時期にどのような聴力変化が見られるかが、その後の見通しを考える材料になります。

比較的高度な難聴で入院治療を受けた121例を調べた研究では、治療開始後7日以内に一定以上の聴力改善が見られた群は、14日以内に同程度の改善が見られなかった群より、最終的な聴力の回復が良好でした。

早期の改善経過と、その後の聴力の見通しに関連があることを示す結果です。

この結果を「最初の1週間で改善しなければ、その後は治らない」と読み替えることはできません。

対象となった患者さんの難聴の程度や治療条件があり、回復の経過にも個人差があります。

重要なのは、発症直後と、聴力が長く変わらないまま1年経過した状態では、回復の見通しを同じようには考えられないことです。「何ヶ月で必ず固定する」という一律の期限よりも、これまでの検査で改善が続いていたのか、長期間安定していたのかを確認する必要があります。

2-2.半年から1年は急性期治療の時期ではない

突発性難聴の病院治療には、発症からの期間を踏まえて検討する治療があります。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の2019年の診療ガイドラインでは、初期治療としてのステロイドは発症2週間以内、回復が不十分な場合の鼓室内ステロイド治療は発症2~6週間の時期に検討することが示されています。

また、治療終了時と、治療終了後6ヶ月以内の聴力評価が推奨されています。

鼓室内ステロイド治療とは、鼓膜の内側に薬を投与する治療です。

これらの期間は、治療を検討する時期や経過を確認する時期を示したものです。

「6ヶ月以内にしか回復しない」という意味ではありません。

一方、発症1年後に、以前から残っている難聴に対して急性期と同じ治療効果を期待する根拠にもなりません。

病院で「聴力が固定している」と説明されたときは、これまでの検査経過から、今後の大きな聴力変化を見込みにくいという意味か、主治医に確認するとよいでしょう。

聴力の見通しについての説明と、耳鳴りなど残る症状への対応は分けて相談できます。

1年後の診療では、現在の聴力を確認したうえで、聞こえを補う方法や残っている症状への対応を相談することが中心になります。

再診する意味がなくなるわけではなく、相談する目的が変わると考えるとよいでしょう。

半年時点の回復可能性や判断については、以下の関連記事で詳しく解説しています。

【関連記事:突発性難聴は半年経っても回復する?3〜6ヶ月と半年以降の違い】

3.1年後に残る症状は聴力とは分けて考える

3.1年後に残る症状は聴力とは分けて考える

3-1.耳鳴り・耳閉感・音の響き

聴力が長く変わっていないからといって、耳鳴りや耳のつまり、音の響きの感じ方まで、その後ずっと同じとは限りません。

耳鳴りは、実際には周囲で鳴っていない音を感じる症状です。

聞こえの低下と関係することがありますが、聴力検査の数値だけで、耳鳴りの強さやつらさを説明できるわけではありません。

公的機関の情報でも、耳鳴りは時間とともに軽くなる場合と、続いたり悪化したりする場合があり、経過には違いがあるとされています。

耳のつまりを表す「耳閉感」や、音が響いて不快に感じる症状についても、自覚的な変化だけから聴力が回復したとは判断できません。

症状が軽くなった場合は、その変化を大切にしながら、聴力の評価とは分けて捉えましょう。

反対に、症状が続いていることだけを理由に「何も対応できない」と決める必要もありません。

診察では、「耳鳴りで眠れない」「食器の音がつらい」など、具体的に困る場面を伝えると、相談の目的が明確になります。

詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。

【関連記事:突発性難聴で耳鳴りが治らない…改善する可能性はある?】

【関連記事:突発性難聴の後遺症|残る症状と改善の可能性】

3-2.日常の聞き取りや慣れ

日常生活での聞き取りやすさは、耳の聴力だけで決まるものではありません。周囲の騒音、相手との距離、話す位置、補聴器などの使用によっても変わります。

例えば、聞こえやすい側に相手に座ってもらう、テレビの音を小さくしてから話す、会話中に相手の顔を見るといった工夫で、会話の負担を減らせる場合があります。

時間が経つ中で、自分が聞き取りにくい状況を把握し、対応しやすくなることもあります。

その結果、「以前より困らなくなった」と感じても、それだけで内耳の働きや聴力が元に戻ったとはいえません。

また、慣れには個人差があります。

「1年経ったのだから慣れるはず」と無理に我慢する必要はありません。

生活上の負担が続いているなら、聞き取りを助ける方法を具体的に相談してよい状態です。

4.1年後でも耳鼻咽喉科を受診した方がよい場合

4.1年後でも耳鼻咽喉科を受診した方がよい場合

4-1.最近さらに聞こえが悪くなった場合

以前から難聴が残っていても、「ここ数日でさらに聞こえにくくなった」という変化は、昔の突発性難聴の後遺症と決めつけないことが大切です。

急に聞こえが悪くなった場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。

難聴の原因や種類を診察と聴力検査で確認する必要があり、新たな急性の難聴なら、今回の変化が始まった時点からの評価が重要になります。

受診時には、次の内容を伝えると経過を整理しやすくなります。

  • 以前の状態と比べて、いつから変化したか
  • 急に悪くなったのか、徐々に悪くなったのか
  • 耳鳴り、耳のつまり、めまいも変化したか
  • 過去の聴力検査と比べられる資料があるか

「1年前に発症したから、今さら受診しても意味がない」と考えず、最近の悪化は新しい変化として相談しましょう。

4-2.反対耳の変化や新しいめまいがある場合

これまで聞こえていた反対側の耳が聞こえにくくなった場合や、以前にはなかっためまいが現れた場合も、耳鼻咽喉科での再評価が必要です。

難聴や耳鳴りにめまいが重なる病気には、メニエール病などもあります。

過去に突発性難聴と診断されていても、新しく現れた症状まで同じ原因とは限りません。

診察では、めまいが始まった時期、続く時間、繰り返しているか、聞こえの変化を伴うかを伝えてください。

自分で病名を判断するより、症状の経過を具体的に説明することが役立ちます。

受診先に迷う場合は、まず近くの耳鼻咽喉科に相談しましょう。

詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。

【関連記事:突発性難聴は何科・どの病院へ行く?受診のタイミングと病院の選び方】

5.1年後の残存難聴に考えたい選択肢

5.1年後の残存難聴に考えたい選択肢

5-1.補聴器などの聴覚リハビリテーション

1年後も難聴が残り、会話や仕事に支障がある場合は、補聴器などで聞こえを補う方法を検討できます。

聴覚リハビリテーションとは、補聴器や聞き取りを助ける機器、会話の工夫などを通じて、難聴による生活上の負担を減らす取り組みです。

突発性難聴の診療ガイドラインでも、難聴や耳鳴りが残る患者さんに、こうした支援の可能性を説明することが推奨されています。

補聴器を使うことは、聴力回復を諦めたという意味ではありません。

現在の聞こえに合わせて、生活を助ける方法を選ぶことです。

補聴器が適しているか、どの程度役立つかは、難聴の程度や言葉の聞き取り、反対側の耳の状態によって異なります。

「音を大きくすれば必ず聞き取れる」とは限らないため、耳鼻咽喉科で評価を受け、必要に応じて試聴や調整を相談しましょう。

その際は、「会議で聞き取れない」「家族との会話で聞き返しが多い」など、改善したい場面を伝えることが大切です。

詳しくは、以下の関連記事で解説しています。

【関連記事:突発性難聴が治らない場合の補聴器|検討する時期と改善の可能性】

5-2.耳鳴りなど残る症状への対応

耳鳴りへの対応では、音を完全になくすことだけでなく、睡眠や集中、日常生活への影響を減らすことも目標になります。

症状や聞こえの状態に応じて、環境音を利用する方法、補聴器、耳鳴りについての説明やカウンセリングなどが検討されます。

認知行動療法という、耳鳴りに伴う考え方や反応を整理して苦痛を減らす方法もあります。

これらは、聴力そのものを元に戻す治療とは目的が異なります。

「耳鳴りがある」と伝えるだけでなく、眠れない、仕事中に集中できない、静かな場所で強く気になるなど、生活への影響も説明してください。

音の大きさだけでは伝わりにくい負担を共有できます。

耳のつまりや音の響きがつらい場合も、症状ごとに相談しましょう。

聴力回復の見通しと、今ある苦痛への対応を分けることで、次に取り組む目標が明確になります。

6.なかいし鍼灸院の1年後の突発性難聴に対する考え方

6.なかいし鍼灸院の1年後の突発性難聴に対する考え方

6-1.半年を超えて聴力が改善した経験はない

ここからは、一般的な医学情報とは分けて、なかいし鍼灸院の臨床経験と施術方針をお伝えします。

当院では、発症から3~6ヶ月程度までの経過の中で、聴力検査の数値が改善した方を経験しています。

一方、発症から半年を超えた段階で、聴力検査の数値が改善した経験はありません。

これは当院で経験した範囲の情報であり、すべての患者さんに当てはまる医学的な期限ではありません。

また、施術中に改善が見られたことだけから、その変化が鍼治療によって生じたと断定することもできません。

当院では、こうした経験と限界を踏まえ、発症からの期間や病院での治療経過を確認して対応を判断しています。

6-2.現在は半年以上経過した方を原則施術適応外としている

当院には、突発性難聴の発症から5年後に初めて来院された方が1名いました。

5回の施術を行いましたが、聴力にも自覚症状にも変化は認められませんでした。

この1例だけで、長期間経過したすべての方への効果を判断できるわけではありません。

当院では、ほかの臨床経験も含めて、長期経過後の方に施術を積極的に勧められるだけの改善経験がないと考えています。

そのため、現在は発症から半年以上経過した突発性難聴について、原則として施術適応外としています。

予約の相談時に発症時期を確認し、この方針を説明したうえで、基本的に施術はお受けしていません。

この基準は、当院の経験に基づく施術方針です。

「半年を過ぎたら病院での相談や症状への対応も不要になる」という意味ではありません。

6-3.1年後は聴力回復を目的に積極的な鍼治療を勧めない

発症から1年が経っていても、「少しでも可能性があるなら試したい」と考える気持ちは自然です。

当院では、その気持ちに対して、根拠の乏しい期待を持たせて通院を勧めることは避けたいと考えています。

発症1年後の聴力回復を目的とした鍼治療は、積極的にお勧めしていません。

耳鳴りなどの自覚症状についても、発症1年後の方に対して改善を見込めると説明できる当院の実績はなく、聴力回復が難しい代わりに耳鳴りの施術を勧めるという対応はしていません。

1年後に難聴や耳鳴りが残っている場合は、まず耳鼻咽喉科で現在の状態を確認し、聞こえを補う方法や、生活上の負担を減らす対応を相談することをお勧めします。

7.まとめ

突発性難聴の発症から1年が経ち、聴力検査の結果も長く変わっていない場合、大きな聴力回復は一般に期待しにくくなります。

体験談を参考にするときも、検査で確認された聴力改善と、自覚症状や聞き取りの変化を分けて考えることが重要です。

今後の判断では、まず「最近、新しく悪くなった症状があるか」を確認してください。

急な聞こえの悪化、反対耳の変化、新しいめまいがある場合は、以前の後遺症と決めつけず、耳鼻咽喉科で再評価を受けましょう。

状態が長く安定していても、生活に支障があれば相談する意味があります。

補聴器などで聞こえを補うことや、耳鳴りの負担を減らすことを、具体的な目標として検討できます。

当院では、発症から半年以上経過した方を原則施術適応外としています。

1年後の方には、聴力回復を期待した通院を積極的に勧めるのではなく、現在の状態に合った対応を選ぶことを大切にしています。

突発性難聴の発症から1年が経過している方へ

突発性難聴の発症から1年が経過している方へ

広島市中区のなかいし鍼灸院では、病院で突発性難聴と診断された方から、現在の症状や施術の対象についての相談を受けています。

発症から1年が経過した突発性難聴は、当院では原則として鍼治療の適応外です。

最近さらに聞こえが悪くなった方や、新しいめまいがある方は、LINEでの相談を待たず、先に耳鼻咽喉科を受診してください。

長く残っている難聴や耳鳴りについては、耳鼻咽喉科で補聴器などの聴覚補償や、症状に応じた対応を相談しましょう。

当院への相談を希望される場合は、発症時期、病院で受けた治療、最後に聴力検査を受けた時期、現在困っている症状をお知らせください。

施術をお受けできるかどうかも含め、当院の方針をお伝えします。

参考文献

1.Chandrasekhar SS, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update). Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019;161(1_suppl):S1-S45.

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2.Chandrasekhar SS, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update) Executive Summary. Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019;161(2):195-210.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31369349/

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https://doi.org/10.4295/audiology.59.58

4.上條貴裕、佐野肇、小野雄一、ほか.突発性難聴の長期観察.Otology Japan. 2005;15(3):209-214.

https://doi.org/10.11289/otoljpn1991.15.3_209

5.National Institute on Deafness and Other Communication Disorders(NIDCD).Tinnitus.

https://www.nidcd.nih.gov/health/tinnitus

6.日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会.めまい.

https://www.jibika.or.jp/owned/contents2.html

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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