突発性難聴に耳栓は必要?片耳・音が響くときの使い方と注意点

突発性難聴に耳栓は必要?片耳・音が響くときの使い方と注意点

突発性難聴になり、「耳を休ませるために耳栓をした方がよいのだろうか」「片耳だけ聞こえにくい場合、どちらの耳につければよいのだろうか」と迷うことがあるかもしれません。

音が響くようになると、日常生活でも耳を塞ぎたくなることがあると思います。

突発性難聴になったことだけを理由に、日常生活で一律に耳栓をする必要があるとはいえません。

耳栓は大きな音から耳を守るために使えますが、突発性難聴そのものを治す道具ではありません。

また、音への過敏さがある場合は、日常音まで遮り続けることに注意が必要です。

この記事では、突発性難聴で耳栓を使う必要性、片耳の場合の考え方、音が響くときや騒音のある場所での使い方、耳栓を選ぶ際の注意点を解説します。

1.突発性難聴だから耳栓が必要とは限らない

1.突発性難聴だから耳栓が必要とは限らない

1-1.日常生活で一律に耳栓をする必要はない

聞こえにくくなると、「音を入れない方が耳の回復によいのでは」と考えるかもしれません。

しかし、通常の会話や生活音を耳栓で遮ることが、突発性難聴の回復を促す標準的な方法として確立しているわけではありません。

米国の突発性難聴診療ガイドラインでも、耳栓による遮音は主要な治療の推奨に含まれていません。

このことは「耳栓を使うと必ず悪くなる」という意味ではなく、耳栓を治療目的で常用する根拠が確認できないという意味です。

なかいし鍼灸院でも、突発性難聴の方に一律に耳栓を勧めているわけではありません。

日常生活で必要かどうかは、病名だけで決めるのではなく、周囲の音や現在の症状に応じて考えます。

1-2.耳栓の使用は目的で考える

耳栓をしてもよいかを判断するときは、「何のために使うのか」を整理することが大切です。

工事や工具などの大きな音から耳を守る目的と、普段の生活音がつらくて遮る目的では、考え方が異なります。

前者では聴覚保護が必要になる場面がありますが、後者では耳栓をつけ続けることが適切とは限りません。

治療中も、耳栓を使えば回復が早まると考えて常時装着する必要はありません。

主治医から個別の指示がある場合はその内容に従い、音のつらさがある場合は、どの場面で使うかも含めて相談しましょう。

2.耳栓でできることとできないこと

2.耳栓でできることとできないこと

2-1.大きな音から耳を守る目的では役立つ

耳栓は、耳に入る音を小さくする聴覚保護具です。適切な製品を正しく装着すれば、有害になり得る騒音にさらされる量を減らす役割があります。

この役割は、突発性難聴の治療とは分けて考えます。

例えば、大きな機械音が続く職場で耳栓を使うのは、すでに起きている難聴を治すためではなく、騒音による別の負担を減らすためです。

耳栓で音が小さく感じられても、その感覚だけで十分に保護できているとは判断できません。

大きな音のある場所では、耳栓だけに頼らず、音源から離れる、滞在時間を短くするなど、音にさらされる状況そのものを見直すことも必要です。

2-2.突発性難聴を治す道具ではない

耳栓をしたことで周囲の音が和らぎ、過ごしやすくなることと、聴力が回復することは別です。

耳栓で突発性難聴そのものが治る、回復が促される、病気の悪化が防げるとはいえません。

急に聞こえにくくなったときは、耳栓で耳を休ませながら様子を見るよりも、耳鼻咽喉科で診察と聴力検査を受けることが優先です。

突発性難聴では、早めに状態を確認し、必要な治療につなげることが重要です。

3.片耳の突発性難聴ではどちらの耳に耳栓をするのか

3.片耳の突発性難聴ではどちらの耳に耳栓をするのか

3-1.発症した耳を常時塞ぐ根拠は確認できない

片耳の突発性難聴では、「聞こえにくい耳を保護した方がよいのでは」と考えがちです。

しかし、発症した耳に日常的に耳栓をして、回復を促す方法は確立していません。

音が響くために発症した耳を塞ぎたくなる場合も、まずは、その症状への対処として適切かどうかを考える必要があります。

「病気になった耳だから塞ぐ」という決め方では、使う目的が曖昧になります。

騒音からの保護が必要な場所では、発症した側だけを守ればよいとは限りません。

左右どちらの耳も騒音にさらされるため、職場の安全基準や専門家の助言に沿って保護しましょう。

3-2.聞こえる側を塞ぐ方法も標準的な対処ではない

反対側の聞こえる耳に耳栓をすれば、左右の聞こえ方が近づき、音の響きが落ち着くのではないかと考える方もいるかもしれません。

しかし、聞こえる側の耳を塞いで左右のバランスを整える方法は、突発性難聴の一般的な標準対処として確認できません。

確認した診療ガイドラインの主要な推奨にも、この方法は含まれていません。

ガイドラインに記載がないことだけで、あらゆる場合に無効とは断定できませんが、誰にでも勧められる方法とはいえません。

当院でも、聞こえる側の耳に耳栓をするよう勧めた経験はありません。

片耳の難聴がある状態で反対側も塞ぐと、会話や周囲の音をさらに聞き取りにくくなることも考慮する必要があります。

日常の音がつらい場合は、自分で塞ぐ側を決めて使い続ける前に、どちらの耳で、どの音が、どのようにつらいのかを耳鼻咽喉科で伝えてください。

4.音が響く・大きく聞こえるときは耳栓の常用に注意する

4.音が響く・大きく聞こえるときは耳栓の常用に注意する

4-1.聴覚過敏と聴覚補充現象は異なる

「聞こえにくいのに、食器の音や人の声が大きく響く」という状態は、矛盾しているように感じるかもしれません。

しかし、音を聞き取る力と、音の大きさをどのように感じるかは、同じではありません。

音へのつらさを説明する際には、「聴覚過敏」と「聴覚補充現象」という言葉が使われます。

聴覚過敏は、通常の生活音を過度に大きく、不快に感じる状態です。

聴覚補充現象はリクルートメントとも呼ばれ、難聴がある方で、小さい音は聞こえにくい一方、音量が上がると急に大きく感じる現象を指します。

両者は同義ではなく、「音が響く」という訴えだけで、どちらかを決めることはできません。

当院に来院された突発性難聴の方でも、発症後に音へかなり過敏になっている方はいます。

これは当院で経験した症状についての記述であり、突発性難聴の方全体での頻度を示すものではありません。

4-2.日常音まで遮り続けることに注意する

音がつらいと、耳栓をつけている間だけ安心できることがあります。

それでも、静かな室内や通常の生活場面まで常に遮音する使い方には注意が必要です。

NHSの患者向け情報では、耳栓やイヤーマフ(耳全体を覆って音を減らす保護具)を常時使用すると、音への感受性を強める可能性があるとして、非常に騒がしい環境での短期使用とは区別しています。

これは、突発性難聴の聴力が必ず悪化するという説明ではなく、音への過敏さに関する注意です。

一方で、痛みや強い不快感が出る音を、無理に我慢して聞き続ける必要もありません。

つらい場面ではその場から離れるなどして負担を減らし、耳栓を使う範囲や時間を医療者と相談しましょう。

受診時には、「掃除機の音がつらい」「会話の声が急に大きく感じる」など、具体的に伝えると状況を説明しやすくなります。

症状が残る場合の全体的な考え方は、以下の関連記事で解説しています。

【関連記事:突発性難聴の後遺症|残る症状と改善の可能性】

5.大きな音がある場所では耳栓を使う場面がある

5.大きな音がある場所では耳栓を使う場面がある

5-1.工事・工具・ライブでは騒音への対策を考える

日常音を常時遮ることへの注意と、有害な騒音から耳を守ることは分けて考える必要があります。

工事現場、電動工具を使う作業、音量の大きなライブなどでは、耳栓やイヤーマフによる聴覚保護を検討する場面があります。

音の大きさだけでなく、どのくらいの時間その音にさらされるかも重要です。

仕事で避けにくい場合は、担当者に現在の難聴を伝え、騒音の少ない作業への変更や、適切な保護具について相談しましょう。

騒音対策は保護具だけに頼らず、作業環境や時間の調整も含めて行うことが基本です。

ライブなどの予定がある場合も、「耳栓をすれば問題ない」とは考えないでください。

発症直後や音へのつらさが強い時期は、参加を見合わせることも含め、主治医と相談して判断しましょう。

5-2.飛行機・新幹線では音と気圧を分けて考える

移動中に耳栓を使いたくなる理由には、車内や機内の音を和らげたい場合と、気圧の変化による耳の詰まりを軽減したい場合があります。

この2つは別の問題です。音を小さくする耳栓を使うことと、耳の圧力調整がうまくできることは同じではありません。

「飛行機用」「気圧調整用」と表示された製品も、突発性難聴を治したり、搭乗中の悪化を確実に防いだりするものではありません。

治療中に移動する場合は、耳栓の有無だけで判断せず、現在の聴力やめまい、耳痛なども含めて主治医に確認してください。

気圧の影響や移動時の注意点は、以下の関連記事にまとめています。

【関連記事:突発性難聴で飛行機に乗っても大丈夫?旅行・新幹線・気圧の影響を解説】

6.耳鳴りがあるときの耳栓

6.耳鳴りがあるときの耳栓

耳鳴りが続くと、「耳栓で音を遮れば、耳鳴りも静かになるのでは」と思うかもしれません。

しかし、耳鳴りは外から入ってくる音ではないため、耳栓でその音自体を遮ることはできません。

むしろ、周囲の音が減ることで耳鳴りとの違いが目立ち、以前より強く意識する場合があります。

「耳栓をしたら耳鳴りが大きく感じた」という場合も、その感覚だけで聴力や病気が悪化したとは判断できません。

NHSでは、耳鳴りへの対処として完全な静寂を避け、穏やかな音を利用する方法を紹介しています。

音への過敏さもある方は、耳鳴りを紛らわせようとして音量を上げず、無理のない対処を医療者と相談してください。

耳鳴りが生活や睡眠に影響している場合は、耳栓で対処し続けるより、そのつらさを耳鼻咽喉科で伝えることが大切です。

改善の可能性や治療後の考え方は、以下の関連記事で解説しています。

【関連記事:突発性難聴で耳鳴りが治らない…改善する可能性はある?】

7.耳栓を選ぶときは用途を先に決める

7.耳栓を選ぶときは用途を先に決める

7-1.使用目的と装着状態を確認する

耳栓を選ぶときは、「最も音を遮る商品」を探す前に、使う場所と目的を決めましょう。

騒音のある作業で使うのか、音楽を聴く場面で使うのかによって、必要な性能や使いやすさが異なります。

大音量環境では、用途に合った遮音性能に加え、耳に合うこと、説明どおりに装着できることが重要です。

パッケージの遮音性能が、そのまま自分の耳で得られるとは限りません。

また、周囲の声や警告音を聞く必要がある場面では、その点も考慮します。

Loopなどの商品名や口コミだけで、「突発性難聴に合う耳栓」と判断することはできません。

購入先よりも、製品がどの用途を想定し、どのような性能を表示しているかを確認することが先です。

日常音への過敏さを理由に選ぶ場合は、商品を比較する前に、耳栓をどの場面で使うことが適切かを耳鼻咽喉科で相談してください。

7-2.ノイズキャンセリングイヤホンは耳栓と別に考える

ノイズキャンセリングイヤホンは、電子的に周囲の音を減らす機能を備えています。

音が静かに感じられることはあっても、一般的な製品をそのまま騒音作業用の聴覚保護具として扱えるわけではありません。

米国のNIOSHは、ノイズキャンセリング機能のあるイヤホンやヘッドホンも、聴覚保護の性能表示がない場合は、聴覚保護具として考えないよう説明しています。

さらに、音楽などを再生する場合は、周囲の音を減らす機能とは別に、再生音量や使用時間を考える必要があります。詳しくは、以下の関連記事をご覧ください。

【関連記事:突発性難聴でイヤホンは使ってもいい?使用時の注意点とイヤホン難聴との違い】

8.耳栓より先に耳鼻咽喉科で状態を確認する

8.耳栓より先に耳鼻咽喉科で状態を確認する

8-1.急な聞こえの変化は速やかに受診する

急に片耳が聞こえにくくなった、耳が詰まった感じとともに聞こえ方が変わった場合は、耳栓を購入して様子を見るのではなく、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。

耳の中の診察と聴力検査によって、何が起きているかを確認する必要があります。

会話ができていても、片耳の聴力低下を反対側が補っている場合があるため、日常生活が送れることだけで判断しないことが大切です。

突発性難聴では、発症からの時間が治療の選択に関係します。

米国の診療ガイドラインでも、早期の聴力検査や、時期に応じた治療の検討が示されています。

耳栓はこれらの代わりにはなりません。

8-2.治療後も症状が残る場合は対処を相談する

病院で治療を受けた後も、聞こえにくさや耳鳴り、音の響きが残ることがあります。

その場合は、「耳栓を続けるしかない」と決めず、残っている症状に対して何ができるかを主治医に相談しましょう。

音への過敏さが強い場合は、聴力の状態に加えて、どの音がつらいか、生活にどのような支障があるかを伝えてください。

治療後に再び急に聞こえにくくなった場合も、以前の症状の続きと自己判断せず、再評価が必要です。

病院での治療や補完的な選択肢の位置づけは、以下の関連記事で説明しています。

【関連記事:突発性難聴の治療|ステロイド・高気圧酸素療法・鍼治療を解説】

9.まとめ

耳栓を使うか迷ったときに最も大切なのは、突発性難聴の治療を目的にするのか、騒音から耳を守るためなのか、音のつらさを和らげたいのかを分けて考えることです。

通常の日常生活では、病気になったことだけを理由に耳を塞ぎ続ける必要はありません。

発症した耳や反対側の耳を常時塞いで、回復や左右のバランス調整を図る方法も確立していません。

大きな音が避けられない場面では適切な保護を考え、日常音がつらい場合は耳栓の常用を自分だけで決めず、耳鼻咽喉科で相談しましょう。

急な聞こえの変化がある方は、耳栓の選び方よりも、まず診察と聴力検査を優先してください。

病院治療後も症状が残り、鍼治療を検討している方へ

病院治療後も症状が残り、鍼治療を検討している方へ

耳栓で周囲の音を和らげても、聞こえにくさや耳鳴り、耳の詰まりが残り、今後の対応に迷うことがあると思います。

なかいし鍼灸院は、広島市中区で、突発性難聴と診断された方の症状について相談を受け付けている鍼灸院です。病院で治療を受けたものの改善が十分でない方や、病院治療と併せて鍼治療も検討したい方は、ご相談ください。

特に発症から3ヶ月以内の方は、発症時期、これまでの病院治療、現在残っている症状をお知らせください。聴力検査の結果がお手元にある場合は、その内容も併せてお伝えいただくと、経過を確認しやすくなります。

鍼治療の効果には個人差があり、聴力の回復や耳鳴りの改善を保証するものではありません。必要な病院での検査や治療を継続したうえで、補完的な選択肢として検討してください。

参考文献

1.Chandrasekhar SS, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update). Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019;161(1_suppl):S1–S45.

突発性難聴の診断・検査・治療の推奨と、耳栓が主要な治療推奨に含まれていないことを確認。

URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31369359/

2.NHS. Noise sensitivity (hyperacusis).

聴覚過敏の説明、耳栓の常用や日常音の完全回避への注意を参照。

URL:https://www.nhs.uk/conditions/hyperacusis/

3.Worcestershire Acute Hospitals NHS Trust. Adult Hyperacusis and Sound Sensitivity.

聴覚過敏と、難聴に伴う聴覚補充現象の区別を参照。

URL:https://www.worcsacute.nhs.uk/leaflets/adult-hyperacusis-and-sound-sensitivity/

4.CDC/NIOSH. Provide Hearing Protection.

聴覚保護具の役割、選び方、装着状態、ノイズキャンセリング機器との違いを参照。

URL:https://www.cdc.gov/niosh/noise/prevent/ppe.html

5.NHS. Tinnitus.

耳鳴りの説明と、完全な静寂を避ける対処を参照。

URL:https://www.nhs.uk/conditions/tinnitus/

6.厚生労働省「健康日本21アクション支援システム」.突発性難聴について。

突発性難聴の症状と、早期の受診・治療開始の重要性を参照。

URL:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/sensory-organ/s-001.html

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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