突発性難聴の鼓室内ステロイド|効果や副作用を解説

突発性難聴の鼓室内ステロイド|効果や副作用を解説

突発性難聴と診断され、ステロイドの内服や点滴を受けたものの、思うように聞こえが戻らない。

そのようなとき、次の治療として「鼓室内ステロイド」を説明されることがあります。

しかし、

「耳に直接注射するのは、どのような治療なのだろう」

「内服や点滴が効かなかったのに、鼓室内ステロイドなら効果があるのだろうか」

「発症から時間が経っていても受ける意味はあるのだろうか」

と疑問や不安を感じる方もいると思います。

鼓室内ステロイドは、鼓膜から中耳へステロイド薬を注入し、内耳へ届けることを目的とした治療です。

最初の治療として行われる場合もありますが、特にステロイドの内服や点滴で十分に改善しなかった場合の追加治療として検討されます。

この記事では、突発性難聴に対する鼓室内ステロイドの効果、受ける時期、治療方法、回数、副作用について解説します。

鼓室内ステロイドを受けても改善が十分でない場合に、どのように今後の治療を考えればよいのかについてもお伝えします。

1.鼓室内ステロイド

1.鼓室内ステロイド

鼓室内ステロイドは、鼓膜に細い針を刺し、中耳にステロイド薬を直接注入する治療です。

「鼓室内ステロイド注射」「ステロイド鼓室内投与」「鼓室内ステロイド注入」などと呼ばれることもありますが、基本的には同じ治療を指します。

突発性難聴の原因は明確になっていませんが、内耳の炎症などが関係している可能性を考慮してステロイドが使用されます。

ステロイドの内服や点滴では、薬が血液を通して全身へ運ばれ、その一部が内耳へ到達します。

一方、鼓室内ステロイドでは、中耳に注入した薬が主に正円窓膜を介して内耳へ移行します。

そのため、全身への投与量を増やさず、内耳周辺へ比較的高濃度のステロイドを届けることを目的としています。

特に、次のような場合に治療の選択肢となることがあります。

  • ステロイドを内服したが、聞こえがほとんど変わらない
  • 点滴治療を受けても難聴が残っている
  • 糖尿病などがあり、全身へのステロイド投与が難しい

ただし、糖尿病などの持病がある場合には、鼓室内投与であっても主治医による適応の判断が必要です。

鼓室内ステロイドは、内服や点滴と薬そのものが大きく異なるわけではありません。

ステロイドをどのような経路で内耳へ届けるかが異なる治療と考えると分かりやすいでしょう。

2.鼓室内ステロイドを行う時期

2.鼓室内ステロイドを行う時期

鼓室内ステロイドを検討するうえで重要なのが、突発性難聴を発症してからの期間です。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の診療ガイドラインでは、初期治療で十分な回復が得られなかった場合、発症から26週間の患者に対して、鼓室内ステロイドによる救済治療を行うことが推奨されています。

初期治療が終わってから長期間様子を見るのではなく、聴力検査で回復の程度を確認し、必要に応じて次の治療を検討することが大切です。

一方、発症から時間が経つほど、鼓室内ステロイドによる改善は期待しにくくなります。

ステロイドの内服や点滴が終わっても聞こえが十分に戻っていない場合は、発症からの期間を確認したうえで、鼓室内ステロイドの適応について早めに耳鼻咽喉科で相談しましょう。

治療を受けるかどうかは、発症からの期間だけで決まるものではありません。

現在の聴力、聴力低下の程度、これまでに受けた治療、持病などを踏まえて、担当医と相談して決めます。

3.鼓室内ステロイドの効果

3.鼓室内ステロイドの効果

鼓室内ステロイドを検討している方にとって最も気になるのは、内服や点滴で改善しなかった場合でも、耳に直接注射すれば聞こえが戻る可能性があるのかという点ではないでしょうか。

鼓室内ステロイドは、初期のステロイド治療で十分に改善しなかった場合でも、さらに聴力が改善する可能性がある治療です。

複数の研究をまとめたCochraneレビューでは、初期治療で改善しなかった突発性難聴に鼓室内ステロイドを行うことで、治療を行わない場合と比べて、聴力が改善する人が増える可能性が示されています。

そのため、ステロイドの内服や点滴で十分な効果が得られなかったからといって、鼓室内ステロイドも効果がないとは限りません。

ただし、研究によって使用する薬剤、濃度、投与回数、治療開始時期、改善の判定方法などが異なります。

研究結果にはばらつきがあり、エビデンスの確実性にも限界があるため、どの程度の改善が得られるのかを一律に示すことはできません。

また、最初の治療として鼓室内ステロイドを行う場合、内服や点滴によるステロイド治療よりも明らかに優れているとはいえません。

鼓室内ステロイドは、耳に直接ステロイドを入れるから必ず内服や点滴よりも効果が高いという治療ではありません。

初期治療で十分に改善しなかった場合にも、さらに改善を目指すための選択肢の1つです。

4.治療方法と回数

4.治療方法と回数

鼓室内ステロイドは、耳鼻咽喉科で鼓膜に細い針を刺し、中耳にステロイド薬を注入します。

治療前には、必要に応じて鼓膜に局所麻酔を行います。

その後、鼓膜から薬を注入し、薬が内耳へ移行しやすい状態を保つため、しばらく横になって安静にします。

治療後は、できるだけ飲み込んだり話したりしないよう指示される場合があります。

薬液が耳管を通って喉へ流れ、苦みを感じることもあります。

治療中には、針を刺すときや薬を注入するときに、痛みや圧迫感を覚えることがあります。

また、一時的にめまいを感じる場合もあります。

治療そのものは比較的短時間で行われ、入院ではなく外来で受けられる医療機関もあります。

鼓室内ステロイドの投与回数や間隔は、医療機関や治療方法によって異なります。

一般的には、数日おきに複数回行う方法や、週に12回程度の投与を数週間続ける方法などがあります。

1回の注射だけで治療が終了するとは限りません。

聴力検査で変化を確認しながら、複数回行われることがあります。

使用するステロイド薬の種類や濃度、投与回数には統一された方法がないため、実際の治療スケジュールは医療機関によって異なります。

治療を検討している場合は、次の点を事前に確認しておくとよいでしょう。

  • 何回程度の治療を予定しているか
  • どのくらいの間隔で通院するのか
  • 聴力検査をいつ行うのか
  • 治療中に注意することはあるか

5.鼓室内ステロイドの副作用

5.鼓室内ステロイドの副作用

鼓室内ステロイドは、ステロイド薬を耳に直接投与するため、内服や点滴と比べて全身への影響を抑えやすい治療です。

そのため、血糖値の上昇、不眠、胃腸症状など、全身へのステロイド投与による副作用のリスクを抑えたい場合に選択肢となることがあります。

ただし、全身への影響が完全になくなるわけではありません。

持病がある方や副作用が心配な方は、治療前に担当医へ伝えることが大切です。

一方、鼓膜に針を刺して薬を注入するため、耳に特有の副作用があります。治療中や治療後には、次のような症状が一時的に起こることがあります。

  • 耳の痛み
  • 耳が詰まったような感覚
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 味覚の変化

針を刺した鼓膜の穴は通常自然に閉じますが、まれに穴が残る鼓膜穿孔が起こることがあります。

また、頻度は高くありませんが、中耳炎などの感染が起こる可能性もあります。

このように、鼓室内ステロイドにも副作用はあります。

治療によって期待できる効果とリスクについて説明を受け、納得したうえで治療を受けることが大切です。

6.鼓室内ステロイドで改善しない場合

6.鼓室内ステロイドで改善しない場合

鼓室内ステロイドを受けても、思うように聴力が改善しないことがあります。

その場合は、まず耳鼻咽喉科で聴力検査を受け、現在の聴力や治療前からの変化を確認します。

そのうえで、発症からの期間やこれまでに受けた治療を踏まえ、追加で検討できる治療があるかを担当医と相談します。

発症からの期間によっては、ステロイド治療と組み合わせた高気圧酸素療法が検討されることがあります。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の診療ガイドラインでは、高気圧酸素療法は、ステロイドとの併用を前提として、初期治療では発症から2週間以内、救済治療では発症から1ヶ月以内の選択肢とされています。

高気圧酸素療法にも検討に適した時期があるため、希望する場合は早めに耳鼻咽喉科で相談する必要があります。

治療を続けても難聴が残った場合には、聞こえの状態に応じて補聴器などによる聴覚管理が検討されることもあります。

鍼治療については、突発性難聴に対する効果が確立しているとはいえません。

また、病院で受ける治療に代わるものではありません。

当院では、発症から間もない時期に鼓室内ステロイドなどの治療を受けられる場合は、病院の治療を優先していただいています。

そのうえで、患者さんの状態や希望に応じて鍼治療を併用し、改善を目指します。

実際に当院には、

「鼓室内ステロイドを受けているが、まだ聞こえが戻らない」

「鼓室内ステロイドまで受けたが、難聴や耳鳴りが残っている」

「病院で受けられる治療を続けながら、鍼治療も併用したい」

という方が来院されています。

鼓室内ステロイドの結果だけで今後を判断するのではなく、発症からの期間、現在の聴力、これまでに受けた治療を確認し、今から検討できることが残されているかを考えることが大切です。

ただし、受けられる治療や期待できる改善の程度は、発症からの期間や聴力の状態によって異なります。

鍼治療を併用した場合も、改善を保証できるものではありません。

7.まとめ

鼓室内ステロイドは、鼓膜から中耳にステロイド薬を注入し、内耳へ届けることを目的とした治療です。

特に、ステロイドの内服や点滴を受けても十分に聴力が改善しなかった場合に、追加治療として検討されます。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の診療ガイドラインでは、初期治療で十分な回復が得られなかった場合、発症から26週間での鼓室内ステロイドによる救済治療が推奨されています。

初期治療で改善しなかった場合でも、鼓室内ステロイドによってさらに聴力が改善する可能性はあります。

ただし、すべての方に効果が得られるわけではなく、改善の程度を事前に予測することは困難です。

鼓室内ステロイドを受けても改善が十分でない場合は、耳鼻咽喉科で聴力を再評価し、発症からの期間に応じて検討できる治療や、今後の聞こえへの対応を相談しましょう。

突発性難聴でお悩みの方へ

突発性難聴でお悩みの方へ

ステロイドの内服や点滴、鼓室内ステロイドなどの治療を受けても思うように聞こえが戻らないと、このまま治らないのではないかと不安になると思います。

当院には、病院での治療を続けながら鍼治療を併用される方や、鼓室内ステロイド、高気圧酸素療法まで受けても十分に改善せず来院される方がいます。

病院で検討される治療には、それぞれ適した時期があります。

受けられる治療が残っている場合は、鍼治療よりも病院での治療を優先してください。

当院では、特に発症から3ヶ月以内で、病院の治療後も難聴や耳鳴りが残っている方からのご相談を受けています。

鍼治療による改善を保証することはできませんが、発症からの期間、現在の症状、聴力検査の結果、これまでに受けた治療を確認したうえで、当院で対応できる状態かをお伝えします。

病院での治療後も聞こえが十分に戻っていない方は、できることがないと諦める前に、一度当院へご相談ください。

参考文献

1.Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update). Otolaryngol Head Neck Surg. 2019;161(1_suppl):S1-S45. doi:10.1177/0194599819859885.

2.Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update) Executive Summary. Otolaryngol Head Neck Surg. 2019;161(2):195-210. doi:10.1177/0194599819859883.

3.Plontke SK, Meisner C, Agrawal S, et al. Intratympanic corticosteroids for sudden sensorineural hearing loss. Cochrane Database Syst Rev. 2022;7(7):CD008080. doi:10.1002/14651858.CD008080.pub2.

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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