突発性難聴と診断され、ステロイドを処方されたものの、
「副作用が強い薬と聞いたけれど大丈夫だろうか。」
「飲み続けても体に影響はないのだろうか。」
と不安を感じている方もいると思います。
また、以前に別の病気でステロイドを使用して体に合わなかった経験があり、
「できればステロイドを使わずに治療したい。」
と考えている方もいらっしゃるでしょう。
実際に当院にも、過去にステロイドが体に合わなかった方や、突発性難聴の治療中に副作用が現れ、別の治療方法を探して来院された方がいます。
ステロイドに限らず、薬には治療のために期待される作用がある一方で、目的とは異なる作用が現れることがあります。
そのため、副作用があることだけを理由に危険な薬と判断するのではなく、期待できる効果と副作用のリスクを比較して治療を考えることが大切です。
特に突発性難聴は、治療開始までの時間がその後の改善に影響します。
副作用が心配だからと自己判断で薬を減らしたり、中止したりすることはおすすめできません。
一方で、体質や基礎疾患、副作用の程度によっては、ステロイド治療の継続が難しい場合もあります。
この記事では、突発性難聴でステロイドを使用したときに起こる可能性のある副作用、副作用が心配な場合の対応、ステロイドを使えない場合に検討される治療について解説します。
1.ステロイドの副作用を正しく理解する
ステロイドは「副作用が強い薬」「できれば使いたくない薬」というイメージを持たれることがあります。
しかし、副作用があること自体は、ステロイドに限ったことではありません。
薬には、治療のために期待される作用がある一方で、目的とは異なる作用が体に現れることがあります。これが副作用です。
副作用があるから危険な薬と考えるのではなく、その薬によって期待できる効果と副作用のリスクを比較することが大切です。
ステロイドには、炎症や免疫反応を抑える作用があります。
突発性難聴の治療ではこの作用を利用しますが、その一方で、血糖値の上昇や不眠、胃の不快感などが現れることがあります。
また、副作用の起こりやすさや程度は、使用する量や期間によって異なります。
ステロイドを長期間使用する場合には、感染症、骨粗しょう症、副腎機能の低下など、さまざまな副作用への注意が必要です。
一方、突発性難聴では一般的に短期間のステロイド治療が行われるため、長期使用と同じように考える必要はありません。
ただし、短期間であれば副作用が起こらないという意味ではありません。
年齢や体質、基礎疾患、使用する量などによっては、短期間でも注意が必要です。
大切なのは、副作用という言葉だけを見て必要以上に怖がるのではなく、自分がどのくらいの量を、どのくらいの期間使用するのか、その治療によってどのような効果が期待できるのかまで含めて判断することです。
不安なことがある場合は、自己判断で治療を変更せず、主治医に相談しながら進めましょう。
2.突発性難聴でみられるステロイドの主な副作用
突発性難聴では、プレドニゾロンなどのステロイドが一般的に使用されます。
短期間の使用でも副作用が現れることはありますが、その種類や程度には個人差があります。
また、ここで紹介する副作用が、すべて同じ頻度で起こるわけではありません。
服用する量や期間、年齢、体質、基礎疾患などによってリスクは異なります。
2-1.胃の不快感や胸やけ
ステロイドの服用中に、
- ・胃がもたれる
- ・胃が痛い
- ・胸やけがする
などの胃腸症状が現れることがあります。
胃の症状や既往歴、併用している薬などに応じて、ステロイドと一緒に胃薬が処方されることもあります。
強い腹痛が続く、黒い便が出る、血を吐くなどの症状がある場合は、そのまま様子を見ず、速やかに医療機関へ相談してください。
2-2.不眠や気分の変化
ステロイドを服用すると、
- なかなか眠れない
- いつもより目がさえる
- 気分が高揚する
- 気持ちが落ち込む
など、睡眠や気分に変化が現れることがあります。
不眠は比較的知られている副作用の1つですが、人によっては気分の変化が強く現れる場合もあります。
眠れない状態が続く場合や、強い気分の高揚、落ち込み、混乱などが現れた場合は、早めに処方した医療機関へ相談しましょう。
2-3.食欲増加やむくみ
ステロイドの影響によって食欲が増したり、体に水分がたまりやすくなって、むくみを感じたりすることがあります。
長期間使用する場合には、体重増加や顔が丸くなるムーンフェイスなどが問題になることがありますが、突発性難聴で行われる短期間の治療と同じようには考えられません。
ただし、短期間でも食欲の増加やむくみを感じることはあります。
2-4.血糖値や血圧の上昇
ステロイドには、血糖値を上昇させる作用があります。
特に注意が必要なのが、糖尿病のある方や、もともと血糖値が高い方です。
ステロイドによって血糖値が大きく上昇する可能性があるため、血糖値を確認しながら治療を行ったり、必要に応じて糖尿病の治療内容やステロイドの投与方法を調整したりすることがあります。
強い口渇、多尿、著しいだるさなどが現れた場合は、早めに医療機関へ相談してください。
また、ステロイドの使用によって血圧が上昇することもあります。
高血圧などの基礎疾患がある場合は、治療を始める前に主治医へ伝えておくことが重要です。
2-5.感染症への注意
ステロイドには免疫反応を抑える作用があるため、感染症にかかりやすくなったり、もともとある感染症が悪化したりする可能性があります。
突発性難聴では短期間の使用が中心であり、長期治療と同じように考える必要はありませんが、使用する量や体の状態によっては注意が必要です。
発熱、強いだるさ、咳などの体調変化が現れた場合は、そのままにせず医療機関へ相談しましょう。
2-6.速やかな相談が必要な症状
副作用の多くは必ずしも重いものではありませんが、次のような症状が現れた場合は、速やかに処方した医療機関へ相談してください。
- 強い腹痛、黒い便、吐血
- 高熱や強いだるさ
- 強い口渇、多尿、著しい体調不良
- 強い気分の高揚、落ち込み、混乱
- 息苦しさ、顔や喉の腫れ
息苦しさや意識の異常など、症状が強い場合や急激に悪化した場合は、救急受診を検討してください。
それ以外の場合も、自己判断で服用方法を変更せず、処方した医師の指示を確認することが大切です。
3.ステロイドの副作用が心配なときの対応
ステロイドの副作用が心配でも、自己判断で薬の量を減らしたり、途中で服用をやめたりすることはおすすめできません。
副作用が現れた場合は、まず主治医に症状を伝え、薬の量や服用方法、治療方法を変更する必要があるのか判断してもらうことが大切です。
また、次のようなことがある場合は、治療を始める前に主治医へ伝えておきましょう。
- 糖尿病や高血圧がある
- 胃潰瘍などの胃腸疾患がある
- 感染症の治療中である
- 緑内障などの眼疾患がある
- 妊娠中または妊娠の可能性がある
- 他の医療機関から薬を処方されている
- 過去にステロイドで強い副作用が現れたことがある
持病があっても、必ずステロイドを使用できないとは限りません。
血糖値や血圧などを確認しながら使用できる場合や、治療を受ける環境、投与量、投与方法などを調整できる場合もあります。
大切なのは、副作用だけでなく、ステロイド治療によって期待できる効果と、治療を十分に受けられない場合のリスクまで含めて判断することです。
4.ステロイドを使えない場合の治療
「ステロイドを使えない」といっても、その状況は人によって異なります。
大きく分けると、
- 内服や点滴など、全身へのステロイド投与が難しい場合
- 過去の強い副作用などにより、ステロイドそのものの使用が難しい場合
があります。
どの治療を受けられるかは、難聴の程度、発症からの期間、基礎疾患、副作用の内容などによって異なります。
そのため、自分でステロイドを使えないと判断するのではなく、まずは耳鼻咽喉科で現在の状態と治療の選択肢を確認することが大切です。
4-1.全身投与の方法や管理を見直す
糖尿病や高血圧などの基礎疾患があっても、必ずステロイドの内服や点滴ができないわけではありません。
血糖値や血圧を確認しながら治療したり、必要に応じて他の診療科と連携したりすることで、全身へのステロイド投与を行える場合があります。
通院での治療が難しい場合に、入院して全身状態を管理しながら治療することもあります。
どのような方法が適しているかは、基礎疾患の状態や突発性難聴の程度などを踏まえて、医師が個別に判断します。
4-2.鼓室内ステロイド注射
内服や点滴による全身へのステロイド投与が難しい場合には、鼓室内ステロイド注射が検討されることがあります。
鼓室内ステロイド注射は、鼓膜を通して中耳にステロイドを注入し、内耳へ薬を届けることを目的とした治療です。
全身への影響を抑えやすいという特徴がありますが、痛み、めまい、鼓膜に穴が残る鼓膜穿孔などが起こる可能性があります。
また、糖尿病がある方すべてに鼓室内ステロイド注射が選択されるわけではありません。
全身投与を行うか、鼓室内投与を行うかは、血糖値の状態や難聴の程度、発症からの期間などを踏まえて判断されます。
治療を受けられる医療機関が限られる場合もあるため、希望する場合は耳鼻咽喉科の主治医に相談しましょう。
4-3.当院における鍼治療の考え方
当院では、ステロイドの副作用が強かった方や、過去の経験からステロイド治療が難しい方に対しても鍼治療を行っています。
施術前には、首や肩周囲の筋緊張、冷え、睡眠、疲労など、循環や自律神経との関係を考えるうえで必要な状態を確認し、一人ひとりに合わせて施術を行います。
ただし、鍼治療は、ステロイドの代わりになることが医学的に確立された治療ではありません。
そのため、ステロイドが使えないから病院での治療をやめて鍼治療だけを受けるのではなく、まず耳鼻咽喉科で受けられる治療を確認したうえで、鍼治療を選択肢の1つとして検討することが大切です。
ステロイドを継続できない場合でも、自己判断で治療を中断したままにせず、その時点で受けられる治療について早めに相談しましょう。
5.まとめ
ステロイドには副作用がありますが、副作用があるから危険な薬というわけではありません。
突発性難聴で行われるステロイド治療は比較的短期間ですが、胃の不快感、不眠、食欲増加、むくみ、血糖値や血圧の上昇などが現れることがあります。
副作用の起こりやすさや程度は、使用する量や期間、年齢、体質、基礎疾患などによって異なります。
副作用が気になる場合や体調に変化が現れた場合は、自己判断で薬を減らしたり中止したりせず、まずは処方した医療機関へ相談しましょう。
また、基礎疾患や過去の副作用などによって、内服や点滴による治療が難しい場合でも、管理方法の見直しや鼓室内ステロイド注射などを検討できることがあります。
ステロイドそのものの使用が難しい場合を含め、受けられる治療がないとは限りません。
突発性難聴は、治療開始までの時間がその後の改善に影響します。
治療を諦める前に、現在の状態に合った方法を耳鼻咽喉科で確認することが大切です。
ステロイドの副作用で治療を続けられない方へ
当院には、過去にステロイドが体に合わなかった方や、副作用によって突発性難聴の治療を継続できなかった方も来院されています。
当院では、首や肩周囲の筋緊張、冷え、睡眠、疲労などを確認し、一人ひとりの状態に合わせた鍼治療を行っています。
当院の臨床では、発症から3ヶ月以内に来院された方のなかに、聴力や耳鳴り、耳の詰まりなどに変化がみられたケースがあります。
ただし、経過には個人差があり、すべての方の改善を保証するものではありません。
まずは耳鼻咽喉科で受けられる治療を確認し、そのうえで鍼治療も検討したい方は、一度当院へご相談ください。
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参考文献
1.日本聴覚医学会 編.急性感音難聴診療の手引き 2023年版.金原出版,2023.
2.Chandrasekhar SS, et al. Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss(Update). Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2019;161(1_suppl):S1-S45.
3.Fardet L, Petersen I, Nazareth I. Common Infections in Patients Prescribed Systemic Glucocorticoids in Primary Care: A Population-Based Cohort Study. PLoS Medicine. 2016;13(5):e1002024.
4.Liu D, Ahmet A, Ward L, et al. A practical guide to the monitoring and management of the complications of systemic corticosteroid therapy. Allergy, Asthma & Clinical Immunology. 2013;9:30.
5.独立行政法人医薬品医療機器総合機構.プレドニゾロン錠 患者向医薬品ガイド.
運営者情報
| 会社名 | 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」 |
| 代表者 | 代表取締役・院長 中石真人 |
| 経歴 | 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校
トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。 |
| 資格 | 鍼灸師・柔道整復師 |
| 創業 | 平成24年9月3日 |
| 所在地 | 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702 |
| 電話 | 050-1255-9166 |
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