腰痛を訴える日本人の数は、年々増え続けています。腰痛で悩んでいる方は、高齢になるにつれて多くなりますが、最近では、若い世代でも腰痛持ちの方が増えているのが現状です。
「ずっと治療しているのに、一向に良くならない」「レントゲン検査、MRI検査など一通りの検査をしたが、どこも悪いところはないと言われた。でも痛くて…どうしたらいいのか…」
このように腰痛の原因がわからず途方に暮れる方が多いのです。
原因不明の腰痛だと不安でしかたありませんよね。「今、自分の体でいったい何が起こっているのか」と不安になってしまいますよね。
でも、大丈夫。
腰痛の原因は必ずあります。原因があるから痛みがあるのです。
数年前に「腰痛はストレスが原因」というニュースがありました。
原因がわからないからと言って腰痛の原因をストレスでまとめてしまうのは、ナンセンスです。ストレスは、都合の良い言葉です。
ストレスは原因ではありません。あくまでストレスは症状を悪化させるもの。
痛みが長く続くとそれだけでストレスになりますよね。
感情的なストレスは症状の改善を妨げてしまいます。これは腰痛に限った話ではありません。
体のどこかに痛みがあれば間違いなくストレスになるのです。そして、痛みの原因がわからないとなれば、なおさらストレスになるのです。
今までの腰痛の原因、これからの腰痛の原因について、新しく正しい知識を身につけることが大切です。
一般的な原因から少し掘り下げた原因までまとめてみましたので、読み進めてみてください。腰痛改善のヒントになれば幸いです。
1.一般的な腰痛の原因分類
腰痛の原因は、特異的腰痛と非特異的腰痛に分けられます。レントゲン検査やMRI検査によって診断できます。
1-1.特異的腰痛
「特異的」とは、原因がはっきり特定できる腰痛のことです。
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折、外傷、内臓の病気などがこれにあたります。
全体の腰痛の15%が特異的腰痛といわれています。
1-2.非特異的腰痛
原因のはっきりわからない腰痛のことです。
ぎっくり腰やぎっくり腰がきっかけとなって慢性化してしまった腰痛、検査をしても原因がわからない腰痛がこれにあたります。
全体の腰痛の85%が非特異的腰痛といわれています。
画像所見で異常がみられない、いわゆる「原因不明」と言われた腰痛が実に85%以上あるということです。
2.異常がない、原因不明の腰痛と診断されてしまう背景
では、85%の腰痛に異常がみられない、原因がわからないと言われてしまう背景には何があるのでしょうか。
一番の原因は、現行の保険制度に問題があります。
病院によっては、何時間も待たされて3分で診察が終わることもしばしばあるでしょう。
しっかりとした問診や触診に時間をかけていないことが多いのです。
なぜ、このような事態になるのでしょうか。
それは、一人ひとり時間をかけていると、経営が成り立たないからです。短時間で多くの患者さんを診ないといけないのです。保険範囲内でできることには限りがあるということが言えます。
そのため、診断をより早くするためにレントゲンやMRI検査などの画像診断に頼ることになります。その結果、原因不明の腰痛ができあがるのです。
画像診断で原因が特定できる腰痛は15%に過ぎません。残りの85%は、原因がわからないとなるのです。
結果的に85%の腰痛は、治せませんと言っているようなものなのです。
しかしながら、画像診断が不要だと言っているのではありません。悪性腫瘍など生命にかかわる疾患が見つかることもあるのです。
3.医師と患者との間には大きな隔たりがある
医師の「異常ありません」と患者の「異常ありません」には大きな違いがあります。
例えば、急に腰が痛くなりやっとの思いで病院へ行って、診察を受けたとしましょう。そこで「どこも異常ありません」「加齢が原因でしょう」「湿布で様子をみましょう」などと言われるケースも多いでしょう。
患者の立場からすれば、「こんなに痛いのに異常ないはずがない」と思うのです。異常があるから病院に行っているわけですから。
しかし、医師の「異常なし」は、検査の結果「構造上異常なし」と言っているだけなのです。
決してどこも悪い所がないと言っているわけではありません。そこが両者の間にある大きな隔たりです。
医師は、腰の痛みからあらゆる原因(癌や内臓疾患など生命にかかわること)を排除するために検査をします。その結果、異常がなかったから、「どこも問題ありません」と言ったに過ぎないのです。
患者は痛みが取れることを期待して病院に行くわけですが、残念ながら医師は診断しているだけなのです。
4.原因不明といわれている腰痛の真の原因とは
原因不明といわれている腰痛の真の原因とは、何でしょうか。
ストレスでしょうか。ストレスはあくまで悪化因子です。
マイナスの感情やストレスは痛みを長引かせてしまいますが、直接の原因ではありません。
腰痛の真の原因は、筋肉や筋膜、靭帯や腱といった軟部組織です。
画像診断は骨や椎間板など構造上の問題を探すのに適していますが、その他の筋肉などの組織を細かく診ることができません。
構造上の問題はわかっても機能上の問題がわからないのです。
そこで最近では、超音波エコーを使って筋肉や筋膜の状態を診ることができるようになりました。それにより、軟部組織へのアプローチが可能となり、今までわからなかった腰痛の原因がわかるようになってきました。
5.ヘルニアと診断されてもヘルニアが原因でないことがほとんど
よく「ヘルニアが神経を圧迫して」「椎間板が薄くなって神経を圧迫しているから痛い」「骨が潰れて、変形して痛い」などと説明されることがありますが、そもそも神経が圧迫されて痛みが出ることはありません。
神経が圧迫されると痛みではなく麻痺が起きます。何も感じない、動かせない…これが麻痺です。
神経の圧迫で痛みやしびれが起きないのは生理学や解剖学を学んでいればわかることです。
病院でMRIやレントゲン画像を見せられて、「椎間板が…骨が狭くなって…」などと言われても恐れることはありません。
ヘルニアでも何事もなく生活している人はたくさんいます。過度な不安や恐怖は痛みを増やしてしまいます。
6.不安と恐怖が腰痛の一番の敵である
一度腰痛を経験してしまうと、「またぎっくり腰になったら大変だ」「痛みがなかなか取れないので、どこか悪いのではないか」など過度に思い込み、安静にしてしまうことが多いです。
また、病院で「痛みのあるうちは安静にしてください」と言われ、必要以上に腰を守ってしまい、痛みが長引いてしまうこともあります。
「病は気から」です。過度な安静や不安や恐怖が腰痛を長引かせてしまっているのです。痛みに対する不安や腰痛に対する古い知識は捨てるべきです。
誰でも痛みがあると不安になり、気分が沈みます。必要以上に神経質になると、脳内で痛みを抑制する働きが弱まります。その結果、痛みが取れなくなるのです。
楽観的に考えて生活する方がその後の経過が良いことがわかっています。
7.まとめ
いかがでしたか?
- 医学的な腰痛の原因は筋肉や筋膜などの軟部組織、ストレスはあくまで悪化因子である
- 不安や恐怖は腰痛を長引かせる
- 医療者の必要以上なネガティブな言葉に惑わされない
もう少し楽観的に考えてみましょう。
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