筋膜性疼痛症候群の診断・検査|
画像で異常がない痛みの評価

筋膜性疼痛症候群の診断・検査|
画像で異常がない痛みの評価

MRIやレントゲンで「痛みを説明する異常は見つからない」と言われても、痛みが続いている。

自分で調べるうちに筋膜性疼痛症候群(MPS)を知り、「自分も当てはまるのでは」と感じている方もいるのではないでしょうか。

MPSは、問診や触診、身体診察などを組み合わせて診断を検討する病態です。

診断基準は提唱されていますが、広く合意された統一的な確定診断基準は確立されていません。

また、画像で異常が見つからないことは、痛みの原因がないことを意味しません。

この記事では、MPSの診断で確認される所見、検査の役割、他の病気との違い、当院で行う痛みの評価を説明します。

1.筋膜性疼痛症候群はどのように診断するのか

1.筋膜性疼痛症候群はどのように診断するのか

筋膜性疼痛症候群は、筋肉・筋膜に関連する痛みを特徴とし、「筋筋膜性疼痛症候群」と呼ばれることもあります。

診察では、痛みの経過や分布を聞き、筋肉の状態や圧迫による反応、身体の動きなどを調べます。

そのうえで、症状を説明する別の病気がないかも検討します。

単独の画像検査や血液検査だけで、MPSを確定することはできません。

日本大学医学部附属板橋病院の解説でも、確定診断のための検査はなく、診察所見と他疾患の鑑別が重要とされています。

「検査で異常がないからMPS」という消去法だけでも判断できません。

筋肉・筋膜に関係する所見と、患者さんが困っている症状がどのように結びつくかを確かめる必要があります。

2.筋膜性疼痛症候群の診断基準

2.筋膜性疼痛症候群の診断基準

2-1.MPSの診断基準で確認される所見

代表的な参考資料に、Simonsらによる診断基準があります。

ここでは、旧・筋膜性疼痛症候群研究会が紹介する1999年の基準に沿って、確認される所見を整理します。

所見

患者さん向けの説明

索状硬結

筋肉の中で、ひものように硬く触れる部分

圧痛点

押すと強い痛みが生じる部位

症状再現

押された刺激が、普段の痛みと結びついて感じられること

可動域制限

痛みなどで身体を動かせる範囲が狭くなること

関連痛

刺激した場所から離れたところに感じる痛み

局所単収縮反応

刺激によって筋肉の一部が瞬間的に収縮する反応

この紹介では、触診可能な筋肉の索状硬結、その中の強い圧痛点、圧迫と現在の痛みとの結びつき、痛みによる可動域制限が「必須基準」とされています。

一方、局所単収縮反応、圧迫による周辺への痛みや感覚、筋電図で調べる局所の電気活動は「確認すべき観察事項」です。

関連痛や局所単収縮反応を、すべて同じ位置づけの必須項目として扱うものではありません。

患者さんにとって大切なのは、単に「押すと痛い場所があるか」だけではないという点です。

押されたときに「いつもの痛みはそれです」と感じる反応も、症状との関係を考える材料になります。

2-2.診断基準があっても判断が難しい理由

提唱された基準があることと、誰が調べても同じ結果になることは別です。

触診する部位や圧力、筋肉の深さなどによって、所見の捉え方に違いが生じます。

また、痛みの範囲や強さは患者さんごとに異なり、線維筋痛症など他の慢性疼痛疾患と症状が重なることも、診断を難しくします。

当院では、診断基準との一致そのものを施術判断の中心にはしていません。

診断基準に当てはめるだけでは、個々の患者さんの施術部位まで決まるわけではないため、現在の症状と、それに関係する組織の評価を重視しています。

3.筋膜性疼痛症候群の診断に使用される検査

3.筋膜性疼痛症候群の診断に使用される検査

3-1.問診・触診・動作検査

問診では、痛みが始まった時期、痛む範囲、症状の変化、仕事や生活への影響などを確認します。

これまで受けた検査や治療、その反応も、現在の状態を考える手がかりになります。

触診では、筋肉の硬さや圧痛だけでなく、圧迫によって普段の症状が再現されるか、離れた場所に痛みが出るかを調べます。

動作検査では、身体を曲げる、反らす、回すなどの動きと症状の関係を確認します。

一方、じっとしていても痛む方や、広い範囲に痛みが続く方では、特定の動作から候補を絞れないこともあります。

動作で痛みが再現されないことだけで、筋肉・筋膜の関与を否定したり、別の原因に決めたりはできません。

3-2.MRI・レントゲン・CT・血液検査

これらの検査には、MPSに似た症状を起こす他疾患を調べる役割があります。

検査

主に確認する内容

レントゲン

骨折、骨の変形、関節の変化など

MRI

椎間板、神経、筋肉などの軟部組織や脊椎内部の異常

CT

骨などの構造を断面画像で詳しく評価

血液検査

炎症性疾患や内科的疾患などを疑う手がかり

すべての検査を一律に受けるのではなく、症状や診察所見に応じて医師が必要性を判断します。

血液検査にも、MPSだけを判定する特有の項目があるわけではありません。

検査結果を振り返る際は、「異常なし」という言葉だけでなく、何を調べ、どの病気の可能性が低くなったのかを確認すると、次の評価につなげやすくなります。

3-3.超音波エコー検査

超音波エコーでは、筋肉・筋膜・腱などの形態や位置関係を観察できます。

身体を動かしながら、周囲組織の動きを確認できることも特徴です。

MPSの評価に画像技術を活用する研究は進んでいますが、エコー画像だけでMPSやトリガーポイントを確定する方法は確立されていません。

当院でも、エコーは施術対象を検討するための情報の1つとして使用します。

画像で気になる部分があっても、その場所が普段の症状に関係するかを、問診や触診などと合わせて考えます。

【関連記事:鍼灸院の超音波エコーとは?施術前に確認する筋肉・筋膜・血管】

4.MRIやレントゲンで異常がないのに痛むのはなぜか

4.MRIやレントゲンで異常がないのに痛むのはなぜか

画像検査は、骨や関節、椎間板などの構造的な異常を調べるために重要です。

一方、痛みのすべてを画像所見だけで説明できるわけではありません。

例えば、筋肉・筋膜に関係する痛みは、通常の画像検査で明確な異常として捉えられないことがあります。

慢性の痛みでは、組織の状態に加えて、神経系で痛みを感じたり調整したりする働きの変化も評価対象になります。

これは、痛みが気のせいだという意味ではありません。

画像に写る構造と、実際に感じている痛みを、別々の情報として整理する必要があるということです。

当院には、複数の医療機関でMRIやレントゲンなどの検査を受けても、明確な原因が分からないまま来院する患者さんがいます。

MPSと診断されて来院する方よりも、自分で調べて「症状が似ている」と感じ、MPSを疑って相談する方の方が多いのが、当院での来院傾向です。

このような場合は、検査歴を踏まえながら、痛む範囲、安静時の症状、触れたときの反応、動作との関係を整理します。

画像で説明がつかない痛みについても、評価すべき情報は残っています。

一方で、画像に異常がないこと自体は、MPSの診断根拠にはなりません。

新しい症状が出た場合や状態が変わった場合には、過去の検査結果だけで判断せず、再評価が必要です。

5.筋膜性疼痛症候群と他の病気の区別

5.筋膜性疼痛症候群と他の病気の区別

5-1.線維筋痛症との違い

MPSと線維筋痛症は、同じ病気ではありません。

MPSでは、筋・筋膜やトリガーポイントに関連する、局所から一定の領域に広がる痛みを中心に考えます。

線維筋痛症は広範囲の痛みを特徴とし、疲労や睡眠の問題、集中しにくさなどを伴います。

比較する点

MPS

線維筋痛症

痛みの特徴

特定の筋肉や領域との関係を評価する

広範囲の痛みを中心に評価する

診察で注目する情報

索状硬結、症状再現、関連痛など

痛みの分布・持続期間、疲労、睡眠など

区別する際の注意

痛みが広がるケースもある

局所の筋・筋膜の痛みが重なるケースもある

当院の臨床経験では、MPSと診断されている方より、線維筋痛症と診断されている方の方が多い印象があります。

そのため、診断名を確認したうえで、現在困っている痛みに筋肉・筋膜がどう関係しているかを評価します。

両者の特徴が重なり、併存する患者さんもいます。

広範囲に痛いという理由だけで線維筋痛症と決めたり、圧痛点があるという理由だけでMPSと決めたりせず、症状全体を捉えることが大切です。

5-2.頚椎症・腰椎疾患・神経障害性疼痛との違い

頚椎症や腰椎疾患と診断されていても、筋肉・筋膜が痛みに関与することはあります。

日本整形内科学研究会も、MPSが脊椎や神経などの病気に合併することを説明しています。

そのため、「骨の問題か、筋肉の問題か」という2択で考えると、症状を十分に整理できないことがあります。

神経の障害が疑われる場合には、筋力低下や運動麻痺、感覚の鈍さ、反射の異常などを医師が評価します。

当院が筋肉・筋膜を施術対象として考えることと、神経疾患の存在を否定できることは別です。

痛みやしびれの感じ方だけで、神経由来か筋・筋膜由来かを自己判断せず、これまでの診断と現在の身体所見を合わせて確認する必要があります。

5-3.医療機関で再評価が必要な症状

当院では、動きによって痛みが変化しない場合などに、内臓疾患も念頭に置きます。

動きによって痛みが変化する内臓疾患もあり、動作による変化や運動麻痺の有無だけでは重い病気を除外できません。

特に、次の症状がある場合は医療機関への相談を優先してください。

  • 手足の力が入りにくくなり、進行している
  • 発熱や強い体調不良を伴って痛む
  • 急に強い胸痛・腹痛が出た
  • 尿が出にくい、尿や便を漏らすなどの変化がある
  • 股の周囲の感覚が鈍い、両脚に急な異常が出た

強い胸痛・腹痛や急な麻痺、排尿排便の異常などでは、救急受診が必要です。

以前の検査で異常がなかった方も、新しく出た症状は別に評価する必要があります。

6.なかいし鍼灸院で行う痛みの評価

6.なかいし鍼灸院で行う痛みの評価

6-1.診断名よりも現在の症状を重視する

当院では、MPSと診断されているかどうかによって、評価方法を大きく変えていません。

患者さんが実際に訴える症状を出発点に、どの組織が関係しているかを考えます。

確認するのは、痛む場所だけではありません。

普段どのような場面で困るのか、触れることでいつもの痛みが再現されるか、離れた場所にも症状が出るかなどを評価します。

当院ではMPSの確定診断は行いません。

症状の特徴がMPSに似ている場合には、その可能性も考えながら、筋肉・筋膜などの組織を評価し、施術対象を検討しています。

医師が行う病名の診断と、鍼灸院が行う施術対象の評価を区別したうえで、現在の症状に向き合います。

6-2.症状が広範囲に及ぶ場合の評価

当院でMPSを疑って相談される患者さんの中には、安静時にも痛みが続き、症状が広い範囲に及んでいる方がいます。

このような場合、動作分析だけでは原因候補を十分に絞り込めません。

そこで、大きな筋肉や、その領域で代表的な筋肉を候補として評価し、施術対象を検討することがあります。

最初から特定の筋肉を原因と決めるのではなく、候補を探りながら反応を確認する進め方です。

例えば、どこを押しても痛い場合には、圧痛の強さだけでは優先順位をつけにくくなります。

普段の症状との一致や分布など、得られる情報を組み合わせて判断します。

評価が難しい症状を、単純な「原因筋の特定」で説明せず、どこまで分かり、何を候補としているかを整理することを重視しています。

6-3.触診とエコーによる組織の評価

当院では、エコーで浅層の筋膜に白く明るく見える部分、いわゆる高エコー像に注目することがあります。

また、深部の骨周囲の組織に気になる所見を認めるケースも経験しています。

これらは、施術対象を考える際の観察情報です。

高エコー像を、そのまま「癒着が証明された状態」とは説明しません。

画像で確認した位置と、触診による反応、症状の分布、身体の動きとの関係を照らし合わせます。

痛む場所から離れた組織が関係する関連痛も考え、痛い場所だけに評価を限定しません。

こうした複数の情報を組み合わせる考え方は、日本整形内科学研究会が示す、身体運動の評価や診察、画像などを総合的に扱う方針とも共通します。

【関連記事:トリガーポイントの見つけ方|圧痛・動作・普段の痛みの再現から探す方法】

7.筋膜性疼痛症候群の診断・検査に関するよくある質問

7.筋膜性疼痛症候群の診断・検査に関するよくある質問

7-1.筋膜性疼痛症候群はMRIで分かりますか?

MRIだけでMPSを確定診断することはできません。

MRIは、椎間板や神経、軟部組織などを調べ、他疾患を評価するために役立ちます。

結果は問診や身体診察と合わせて判断します。

7-2.筋膜性疼痛症候群には明確な診断基準がありますか?

Simonsらをはじめ、診断基準は提唱されています。

一方、広く合意された統一的な確定診断基準は確立されていません。

基準の項目数だけで自己診断するのではなく、症状との対応や他疾患を含めた評価が必要です。

7-3.線維筋痛症と診断されていてもMPSの可能性はありますか?

両者は異なる病態ですが、症状が重なったり、併存したりします。

線維筋痛症という診断名だけで、局所の筋・筋膜の関与が否定されるわけではありません。

現在受けている診療を踏まえ、追加で何を評価する必要があるかを考えます。

7-4.病院で異常なしと言われた場合、どうすればよいですか?

まず、検査結果や紹介状などを整理し、何が確認されているかを振り返ってください。

痛む部位、安静時の症状、動作との関係、受けた治療と反応をメモすると、次の相談で伝えやすくなります。

すでに複数の病院を受診している方は、MPSや慢性疼痛の診療に取り組む医師による再評価も選択肢です。

受診先を探す際は、診療科名に加え、実際にMPSの評価を行っているかを確認してください。

【関連記事:筋膜性疼痛症候群は何科へ?診断・検査と病院の探し方】

8.まとめ

MPSの診断では、問診や身体診察を組み合わせ、筋・筋膜に関係する所見と他疾患の両方を評価します。

画像で異常が見つからなくても痛みの原因がないとは限りませんが、それだけでMPSと決めることもできません。

すでに検査を受けている方は、検査歴と症状の経過を整理し、まだ説明できていない痛みについて相談することが次の一歩になります。

当院では、診断名だけで施術部位を決めず、動作・触診・エコーなどから症状に関係する組織を評価しています。

動作で再現しにくい痛みや広範囲の症状についても、得られる情報を組み合わせて施術対象を検討します。

LINEでのご相談

病院で検査を受けても痛みが続き、筋肉や筋膜が関係しているのではないかとお考えの方は、現在の症状や検査歴についてLINEからご相談ください。

広島市中区のなかいし鍼灸院では、病院での検査・治療後も残る痛みやしびれについて、当院の施術対象となるかのご相談を受けています。

医師による診断や再評価が必要な症状では、医療機関への受診を優先してご案内します。

参考文献

1.筋膜性疼痛症候群研究会.診断基準.Simonsらの1999年の基準を紹介する旧サイト資料。

2.Steen JP, Jaiswal KS, Kumbhare D.Myofascial Pain Syndrome: An Update on Clinical Characteristics, Etiopathogenesis, Diagnosis, and Treatment.Muscle & Nerve.2025;71(5):889–910.

3.日本大学医学部附属板橋病院.筋・筋膜性痛症候群.

4.一般社団法人 日本整形内科学研究会.一般の方へ.

5.一般社団法人 日本整形内科学研究会.医療関係者へ.

6.American College of Rheumatology.Fibromyalgia.

7.NHS.Back pain/Chest pain.

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

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