トリガーポイントとツボの違いとは?位置や鍼治療の考え方を解説

トリガーポイントとツボの違いとは?位置や鍼治療の考え方を解説

「トリガーポイントに鍼を打っています」と説明されて、「ツボに打つ鍼とは何が違うのだろう」と疑問に思ったことはありませんか。

トリガーポイントとツボは、身体上の位置が重なることはあっても、もともとの概念や治療部位を決める考え方が異なります。

ツボは東洋医学の経絡・経穴という考え方に位置づけられ、トリガーポイントは筋肉に関連する痛みなどの研究や臨床で扱われてきました。

広島市中区のなかいし鍼灸院では、ツボや経絡を施術部位の判断基準にしていません。

患者さんの動作や触診による反応を確認し、現在の症状に関係する部位を判断しています。

この記事では、両者の概念や位置の違いから、実際に鍼を打つ場所をどのように決めるのかまで解説します。

1.トリガーポイントとツボの違い

1.トリガーポイントとツボの違い

まず、典型的な考え方を比較すると、次のように整理できます。

比較項目

トリガーポイント

ツボ(経穴)

基本的な概念

筋・筋膜性疼痛などの評価で用いる概念

東洋医学の体系に位置づけられる施術点

理論的背景

筋肉や痛みに関する研究・臨床

経絡・経穴などの伝統医学的理論

位置

どこに存在するかは個々の状態によって異なる

名称のある経穴には基本となる位置が定められている

評価の手がかり

筋肉の状態、触診、症状の再現、関連痛など

経穴の位置や伝統的な適応、全身の状態、触診など

鍼の施術対象

症状に関係する筋肉などの組織を評価して選ぶ

経穴を中心に選択する方法がある

この表は、代表的な考え方を整理したものです。

経穴を使う鍼治療でも、患者さんごとの症状や身体の反応を確認します。

また、東洋医学には、決まった位置ではなく、触れたときの痛みなどをもとに選ぶ「阿是穴(あぜけつ)」という考え方もあります。

そのため、「ツボはすべて固定された場所で、トリガーポイントだけが患者ごとに変わる」という分け方は正確ではありません。

大まかなイメージとしては、ツボを用いる鍼は東洋医学的な考え方、トリガーポイントを対象にする鍼は西洋医学的な身体や痛みの考え方に基づくものと捉えると理解しやすいでしょう。

本来、トリガーポイントとツボは異なる理論から生まれた概念であり、同じ尺度で単純に比較することが難しい面もあります。

それでも、身体上の位置や刺激した際の反応などに共通する特徴があるため、両者の違いについて疑問を持つ方が多いのだと当院では考えています。

違いを理解するうえで大切なのは、場所だけでなく、「何を根拠にその場所を施術対象として選ぶのか」という点です。

2.トリガーポイントとツボの位置が重なることはある

2-1.過去の研究で位置や痛みとの対応が報告されている

トリガーポイントとツボが、同じような場所に位置することはあります。

1977年のMelzackらの研究では、トリガーポイントと痛みの治療に用いる経穴について、身体上の分布と関連する痛みのパターンを比較し、71%の対応が報告されました。

この研究は、両者の共通点を考えるきっかけとなりました。

一方、2003年にはBirchが、比較した経穴の扱いや痛みに対する適応などを検討し、71%という結果に異論を示しています。

したがって、「トリガーポイントとツボは7割が同じ場所にある」と、確立した一致率のように説明することはできません。

過去の研究で約7割の対応が報告されたことはありますが、その解釈について研究者間で見解が分かれている、という理解が適切です。

当院の臨床で7割の一致を確認している、という意味でもありません。

2-2.経絡の走行と筋膜のつながりには類似性が指摘されている

経絡とは、東洋医学で身体の各部を結ぶ道筋として捉えられてきたものです。

筋膜は筋肉を包む結合組織であり、周囲の組織と連続しています。

この経絡の走行と、筋膜を含む結合組織のつながりに似た部分があるのではないか、という仮説があります。

2002年のLangevinらの研究では、人の腕の解剖標本などを用い、経穴の位置と筋肉の間や内部にある結合組織との関係が検討されました。

2011年のBaiらの論文でも、筋膜のネットワークが経穴や経絡の解剖学的な基盤となる可能性について論じられています。

これらは、伝統的な考え方と身体の構造との関係を探る研究です。

経絡の実体が筋膜であると確立されたわけではありません。

筋膜のつながりと経絡の走行には類似性が指摘されているものの、両者をそのまま同じものとして扱わないことが大切です。

2-3.同じ場所でも選ぶ理由は異なる

仮に、2人の施術者が同じ身体部位に鍼を打ったとしても、その場所を選んだ理由まで同じとは限りません。

経穴を使う施術者は、経穴の適応や経絡、全身の状態などから選んでいるかもしれません。

トリガーポイントを対象とする施術者は、筋肉の状態や触診による症状の再現を手がかりに選んでいるかもしれません。

また、トリガーポイントがどこに存在するかは、患者さんの状態によって異なります。

身体の図で示された代表的な場所が、そのまま全員の施術部位になるわけではありません。

位置が重なることは、両者の共通点の1つです。

そこから、概念や治療方針まで同じだと結論づけることはできません。

3.トリガーポイントとツボでは治療部位の決め方が異なる

3.トリガーポイントとツボでは治療部位の決め方が異なる

3-1.ツボを使う鍼治療では経穴の位置や適応を参考にする

東洋医学的な鍼治療では、症状に加えて、経絡や全身の状態などを考慮し、使用する経穴を選びます。

基本となる位置が定められている経穴でも、すべての患者さんに同じ組み合わせで鍼を打つわけではありません。

問診や触診などを通じて、その患者さんにどの経穴を用いるかを判断します。

さらに、先ほど紹介した阿是穴のように、身体に触れたときの反応をもとに選ぶ考え方もあります。

「ツボを使う治療」という言葉の中にも、施術部位の選び方には幅があります。

3-2.トリガーポイントへの鍼治療では症状の再現を手がかりにする

筋・筋膜性疼痛の研究では、トリガーポイントは、筋肉の張った帯状の部分に認められる刺激に敏感な部位として扱われます。

圧迫によってその場所が痛むほか、離れた場所に痛みが現れることもあります。

評価では、単に硬い場所や押して痛い場所を探すだけでなく、筋肉の状態や痛みの広がり、患者さんが普段感じている症状との関係を確認します。

当院が特に重視するのは、触診によって「いつもの痛みです」「そこを押されると、普段つらい場所に響きます」と感じる部位です。

押された刺激そのものが痛いのか、普段困っている症状が再現されているのかを区別します。

「押すと痛い」という反応だけで、トリガーポイントとは判断しません。

具体的な探し方については、動作分析と触診の関係を解説した記事をご覧ください。

【関連記事:トリガーポイントの見つけ方|圧痛・動作・普段の痛みの再現から探す方法】

3-3.痛む場所と鍼を打つ場所が異なることもある

トリガーポイントを考えるうえで重要なのが「関連痛」です。

関連痛とは、刺激した場所とは別の場所に感じられる痛みのことです。

そのため、患者さんが痛みを感じている場所と、施術対象として選ぶ場所が離れることがあります。

当院でも、痛む場所を確認したうえで、その症状に関係する別の筋肉や周囲の組織を評価します。

経穴を使う鍼治療でも、症状がある場所から離れた経穴を選ぶことがあります。

「痛む場所から離れているからトリガーポイント治療だ」と、距離だけで見分けられるわけではありません。

ここでも重要なのは、なぜその場所が現在の症状に関係すると判断したのかという点です。

4.トリガーポイントとツボへの鍼に一律の優劣はつけられない

4.トリガーポイントとツボへの鍼に一律の優劣はつけられない

トリガーポイントを狙う鍼治療と、経穴を用いる鍼治療は、治療部位の選択方法が異なります。

その違いだけを根拠に、どちらかが必ず優れていると判断することはできません。

実際の施術内容は、どこに鍼を打つかに加えて、対象とする組織、鍼の深さや方向、刺激方法などによっても変わります。

同じ「トリガーポイントへの鍼」「ツボへの鍼」という名称でも、施術者によって内容は異なります。

なかいし鍼灸院では、経穴を施術部位選択の基準にしていません。

そのため、当院の施術の中で、経穴を基準にした鍼治療とトリガーポイントを対象にした鍼治療の効果を直接比較した経験はありません。

当院がお伝えしたいのは、一方の方法が優れているということではなく、現在の症状をどのように評価し、施術部位を判断しているかという点です。

施術を検討するときは、「ツボかトリガーポイントか」という名称に加えて、どのような評価を行い、自分の症状をどう説明してもらえるかも確認するとよいでしょう。

5.なかいし鍼灸院ではツボよりも症状が再現する部位を重視する

5.なかいし鍼灸院ではツボよりも症状が再現する部位を重視する

5-1.ツボや経絡を基準に治療部位を決めない

当院では、ツボや経絡を施術部位の判断基準にしていません。

施術中も、今触れている場所がどの経穴に当たるか、経絡の上にあるかを基準にはしていません。

患者さんの症状に関係する筋肉や軟部組織を評価し、その結果から施術対象を選んでいます。

結果的に、名称のある経穴と同じ場所に鍼を打つことはあります。

それは経穴を選択したからではなく、症状との関係を確認して選んだ場所が重なったということです。

同じ場所に鍼を打つ場合でも、当院の判断の出発点は、経穴の名称や位置ではなく、患者さんが困っている症状です。

5-2.患者ごとに動作や触診から施術部位を判断する

当院では、まず普段の症状が出る動作や姿勢を確認します。

どこが痛いかだけでなく、どの方向に動かすと痛むのか、どの姿勢を続けるとつらくなるのかを把握するためです。

その情報から、負担がかかっている筋肉や周囲の組織を絞り込み、触診によって普段の症状が再現されるかを確かめます。

評価は、次の流れを基本にしています。

  1. 普段の症状が出る動作や姿勢を確認する。
  2. 症状に関係する筋肉や軟部組織を絞り込む。
  3. 触診で普段の症状が再現されるかを確認する。
  4. 必要に応じてエコーで組織の位置関係などを確認する。
  5. 評価結果をもとに施術部位を判断する。

エコーは、対象とする組織や周囲の構造を確認するために用います。

画像だけでトリガーポイントを決めるのではなく、動作や触診で得られた情報と合わせて判断します。

例えば、同じ「首が痛い」という訴えでも、振り向いたときにつらい方と、同じ姿勢を続けるとつらい方では、確認すべき動作や組織が変わります。

そのため、病名や痛む場所だけで施術部位を固定しません。

当院では、先に動作から候補を絞り、その後に触診で症状との関係を確かめることを重視しています。

5-3.患者さんがトリガーポイントを「ツボ」と呼ぶこともある

当院では、トリガーポイントへの鍼治療中に、患者さんから「そのツボは何ですか?」と質問されることがあります。

患者さんにとって「ツボ」は、鍼を打たれている場所や、刺激すると響く場所を表す身近な言葉でもあります。

そのため、当院では毎回、専門用語の違いを説明したり、呼び方を訂正したりするわけではありません。

通常は、「現在の症状に関係している部分に鍼をしています」と説明しています。

さらに詳しく質問された際には、当院ではツボや経絡を基準に施術していないことや、動作・触診から施術対象を判断していることをお伝えします。

患者さんが「ツボ」と呼ぶこと自体は自然なことです。

言葉を正確に使い分けてもらうことよりも、どこを、何のために施術しているのかを理解していただくことを大切にしています。

6.トリガーポイントとツボの違いに関するよくある質問

6.トリガーポイントとツボの違いに関するよくある質問

6-1.トリガーポイントとツボは同じものですか?

基本的な概念は異なります。

位置や刺激による反応に共通点はありますが、同じ意味の言葉ではありません。

特に、位置が定められた経穴と、患者さんの状態に応じて確認するトリガーポイントでは、施術部位を選ぶ考え方が異なります。

6-2.トリガーポイントは東洋医学のツボですか?

トリガーポイントは、筋・筋膜性疼痛などの研究や臨床で扱われてきた概念です。

東洋医学の経穴とは異なる背景があります。

東洋医学の阿是穴との共通点を論じる研究もありますが、それを理由に、トリガーポイントを東洋医学のツボとそのまま言い換えることはできません。

6-3.ツボを押して痛い場所がトリガーポイントですか?

押して痛いというだけでは判断できません。

筋肉の状態や関連痛、普段の症状が再現されるかなどを合わせて評価します。

当院でも、押されたことによる痛みと、普段困っている症状の再現を区別しています。

【関連記事:トリガーポイントと圧痛点の違い|押して痛いだけでは判断できない理由】

6-4.トリガーポイント鍼とツボへの鍼は効果が違いますか?

施術部位の選び方や刺激方法が異なるため、名称だけで効果を比較することはできません。

どちらかが必ず効果的と考えるのではなく、患者さんの症状に対する評価と具体的な施術内容を確認することが大切です。

7.まとめ

トリガーポイントとツボは、身体上の位置が重なることがあっても、異なる背景から生まれた概念です。

経絡と筋膜のつながりについても研究されていますが、同じものと証明されたわけではありません。

実際の鍼治療を理解するうえで大切なのは、「どの場所か」に加えて、「なぜその場所を選ぶのか」を知ることです。

なかいし鍼灸院では、ツボや経絡を基準にせず、患者さんの動作、触診による症状の再現、必要に応じたエコーでの確認などから施術対象を判断しています。

ご相談の際は、痛む場所とともに、どの動作や姿勢でつらくなるのかをお伝えください。

ご自身でツボやトリガーポイントを特定してから来院する必要はありません。

現在の症状についてLINEでご相談ください

病院で検査や治療を受けても痛みやしびれが残っている方、筋肉や筋膜が自分の症状に関係するか分からない方は、現在の状態をお聞かせください。

広島市中区のなかいし鍼灸院では、症状が出る動作や姿勢、これまでに受けた検査・治療などを確認し、当院で対応できる症状かを検討します。

当院の施術対象か判断に迷う場合は、LINEからご相談ください。

参考文献

1.Melzack R, Stillwell DM, Fox EJ. Trigger points and acupuncture points for pain: correlations and implications. Pain. 1977;3(1):3–23.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/69288/

2.Birch S. Trigger point–acupuncture point correlations revisited. J Altern Complement Med. 2003;9(1):91–103.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12676038/

3.Langevin HM, Yandow JA. Relationship of acupuncture points and meridians to connective tissue planes. Anat Rec. 2002;269(6):257–265.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12467083/

4.Bai Y, et al. Review of Evidence Suggesting That the Fascia Network Could Be the Anatomical Basis for Acupoints and Meridians in the Human Body. Evid Based Complement Alternat Med. 2011;2011:260510.

https://doi.org/10.1155/2011/260510

5.Lee S, Lee IS, Chae Y. Similarities between Ashi acupoints and myofascial trigger points: Exploring the relationship between body surface treatment points. Front Neurosci. 2022;16:947884.

https://doi.org/10.3389/fnins.2022.947884

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

筋膜性疼痛症候群(MPS)について詳しくはこちら

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