トリガーポイントと圧痛点の違い|押して痛いだけでは判断できない理由

トリガーポイントと圧痛点の違い|押して痛いだけでは判断できない理由

肩や首、腰を押したとき、「痛いけれど気持ちいい」「そこがいつも痛む場所だ」と感じることがあります。

このような場所を、すべてトリガーポイントと呼ぶわけではありません。

圧痛点は押すと痛みを感じる場所であり、トリガーポイントの評価では、普段の痛みの再現や関連痛などを確認します。

広島市中区のなかいし鍼灸院では、患者さんが「そこです」「普段の痛みはそれです」と感じる部位を、最優先で探すトリガーポイントとして重視しています。

さらに、触診で反応した場所と、実際に鍼で刺激すべき組織の位置を分けて考えています。

この記事では、圧痛点とトリガーポイントの違いから、指で押した場所と鍼で刺激する場所がずれる理由、当院の評価・施術方法まで解説します。

1.トリガーポイントと圧痛点の違い

1.トリガーポイントと圧痛点の違い

1-1.圧痛点とは押すと痛みを感じる場所

圧痛点とは、指などで圧迫したときに痛みを感じる場所です。

普段は気にならなくても、押されて初めて痛みに気づく場所も含まれます。

ここで区別したいのが、「押されたから痛い」という反応と、「いつもの症状が再現された」という反応です。

例えば、肩を押されて痛みを感じても、その痛みが日常生活で困っている首の痛みと同じとは限りません。

圧痛は身体の状態を知る手掛かりですが、それだけで普段の症状の主要な発生源を決めることはできません。

施術部位を考えるには、押したときの痛みだけでなく、普段の症状とのつながりを確認する必要があります。

1-2.トリガーポイントは普段の痛みや関連痛が重要

筋・筋膜性トリガーポイントは、一般に、筋肉の帯状に緊張した部分にある過敏な部位として説明されます。

評価では、その部分を刺激したときの痛みや、刺激した場所から離れたところに感じる「関連痛」などを確認します。

専門家による国際的な合意では、帯状の筋緊張、過敏な部位、関連痛が診断上の重要な組み合わせとして提案されています。

また、刺激によって患者さんが普段の痛みを認識することは、活動性トリガーポイントを考えるうえで重要な特徴です。

比較項目

圧痛点

トリガーポイント

基本的な特徴

押すと痛い場所

筋肉の帯状の緊張などに伴う過敏な部位

普段の症状の再現

必須ではない

活動性の評価で重要

関連痛

定義に含まれない

刺激した場所から離れて痛みを感じることがある

施術部位の判断

圧痛だけでは不十分

症状再現や動作などと組み合わせて評価

筋膜性疼痛症候群(MPS)は、こうしたトリガーポイントに関連する痛みを特徴とする病態です。

単に運動後に筋肉が痛むことや、押すと痛い場所があることだけを指す言葉ではありません。

当院では、このトリガーポイントの評価に加え、症状に関係する筋膜や腱、靭帯なども確認し、施術対象を選んでいます。

2.押して痛いだけではトリガーポイントと判断できない理由

2.押して痛いだけではトリガーポイントと判断できない理由

2-1.単なる圧痛と普段の症状が再現される反応は違う

当院では、触診で得られる反応を、例えば次のように分けて確認します。

  1. 押したときだけ、その場所が痛い。
  2. 押すと、その場所に普段感じている痛みが再現される。
  3. 押した場所から離れた位置に、普段の痛みが現れる。

当院が最も探したいのは、2番目の「普段の痛みが再現される場所」です。

単に痛みに敏感な場所ではなく、患者さんが困っている症状と結びつくトリガーポイントとして重視します。

3番目のように、離れた場所へ普段の痛みが現れる反応も重要です。

例えば、肩周辺を押したときに、いつも困っている腕の痛みを感じるなら、押した部分と腕の症状との関係を考えます。

患者さんには、痛みの強さに加えて「いつもの痛みに近いか」「普段と同じところに感じるか」を確認します。

「痛気持ちいい」という感覚も手掛かりになりますが、その感覚だけで施術部位を決めるわけではありません。

2-2.痛い場所と症状に関係する場所が異なることがある

関連痛とは、刺激された組織の場所とは別の場所に感じる痛みです。

首から肩甲骨周辺、肩から腕など、患者さんが痛みを感じる場所と、症状に関与する筋肉の位置が異なるケースがあります。

そのため、肩甲骨の周りが痛いから肩甲骨周辺だけ、腕が痛いから腕だけ、という決め方では評価が足りません。

首を動かしたときに痛むのか、腕を上げたときに痛むのかを確認し、その動きで負担を受ける組織を考えます。

当院では、関連痛の分布だけで施術場所を決めず、動作と症状再現がどのようにつながるかを重視しています。

痛む場所そのものも確認しながら、そこへ症状を生じさせている部位を探します。

3.触診で見つけた場所と実際のトリガーポイントが異なる理由

3.触診で見つけた場所と実際のトリガーポイントが異なる理由

3-1.指で押した場所の直下に原因があるとは限らない

指で押して普段の痛みが再現されると、その真下に反応する組織があるように感じます。

当院がエコーで触診時の組織の動きを観察すると、指の直下とは異なる位置への刺激が関係している場面があります。

指で押すと、皮膚の下にある筋肉や筋膜も一緒に動きます。

圧力は真下だけでなく横方向にも伝わり、周囲の組織が押されたり、滑ったりします。

その結果、指の位置から少しずれた組織が刺激され、患者さんが「そこです」と感じる反応につながるのです。

例えば、指の下にある組織が横へ滑り、その先にある筋膜や筋肉の境界部分に刺激が加わる場面です。

押している側には「指の真下が反応している」と感じられても、実際に動いている組織を観察すると、位置関係の捉え方が変わります。

触診で症状が再現された位置と、鍼先を届けたい位置は、分けて考える必要があります。

3-2.筋肉の中ではなく筋膜が反応していることもある

当院では、触診だけでは筋肉の中央に反応があると考えていた場所を、エコーで確認することがあります。

押しながら観察すると、組織が横へ滑り、筋肉と筋肉の間にある筋膜付近へ刺激が加わったときに、患者さんの反応が得られる場面があります。

筋膜とは、筋肉を包んだり、筋肉同士を隔てたりする膜状の組織です。

筋肉の中を刺激しているつもりでも、触診によって実際に負担が加わる場所は、その境界部分ということもあるのです。

エコーでは、こうした組織の位置や動きを観察します。

画面に映った一点をトリガーポイントと決めるのではなく、押したときに何が動き、どの位置への刺激で症状が再現されるかを照らし合わせます。

超音波などを用いてトリガーポイントに関連する組織特性を調べる研究も進められています。

当院では画像の見え方だけで判断せず、患者さんの反応と動作評価を組み合わせて施術に生かしています。

4.トリガーポイントの鍼治療には触診とは異なる技術が必要

4.トリガーポイントの鍼治療には触診とは異なる技術が必要

4-1.押して反応した場所に鍼を刺すだけでは不十分

指で押す刺激と、鍼による刺激には違いがあります。

指による押圧では、ある程度の幅を持って組織を押し動かせます。

一方、細い鍼による刺激は局所的です。

指で押したときに横方向へ伝わっていた圧力を、同じ位置から鍼を刺すだけで再現できるわけではありません。

例えば、触診では横へずれた筋膜に刺激が伝わっていたのに、鍼先が指の直下の筋肉にとどまっていれば、狙う組織が異なります。

当院では、この違いが、押すと普段の痛みが再現されるのに、同じ場所への刺鍼では反応が得られない理由のひとつだと考えています。

「押して反応する場所を見つけること」と、「鍼でその反応に関係する組織へ届かせること」は、別の技術です。

施術部位の選び方を比較した研究もあります。

高齢の慢性腰痛患者9名を対象とした予備的研究では、トリガーポイント治療群で痛みと生活機能の有意な改善が認められ、圧痛点治療群では有意な改善が認められませんでした。

一方、症状に関係する筋肉を先に選び、その同じ筋肉内のトリガーポイントと圧痛点を比較した別の小規模研究では、両方の刺激で改善がみられ、刺激間の明確な差は認められていません。

研究では、点の違いに加え、どの筋肉を対象にしたかも検討されています。

4-2.鍼先で反応する組織を探す技術

当院では、必要に応じて刺入後にも鍼先の位置を調整し、触診で得られた反応に関係する組織を探ります。

皮膚の上で決めた位置に刺して終わるのではなく、組織の位置関係と患者さんの反応を確認しながら施術します。

筋肉内部を対象とする場合もあれば、筋膜や筋肉同士の境界部分を対象とする場合もあります。

また、動作評価から腱や靭帯などの関与を考え、その組織を施術対象にすることもあります。

これらの組織をすべて同じ意味のトリガーポイントと呼ぶのではなく、症状との関係に応じて選びます。

鍼先の調整で重視するのは、深さや刺激の強さを増すことではありません。

解剖学的な位置関係を踏まえ、目的とする組織へ刺激を届けることです。

強い響きが出たかどうかだけで判断せず、普段の症状との関係や、施術前後の動作の変化も確認します。

5.なかいし鍼灸院が重視するトリガーポイントの評価

5.なかいし鍼灸院が重視するトリガーポイントの評価

5-1.普段の姿勢や動作から負担のかかる組織を考える

当院の評価では、まず「どのようなときに痛むか」を確認します。

首を後ろへ倒す、顔を横へ向ける、腕を上げるなど、普段の症状を再現する動作が重要です。

同じ首の痛みでも、痛む動きや姿勢が違えば、負担を考える組織も変わります。

デスクワーク中に悪化するのか、動かし始めに痛むのか、特定の方向へ動かすと痛むのかを具体的に確認します。

診断名や画像所見は、病院での検査・治療経過を理解するために確認します。

そのうえで、実際の動作を見て、筋肉や筋膜などへの負担を評価します。

病名だけで施術場所を固定せず、その人の症状が再現される動きから考えることが当院の基本です。

5-2.触診とエコーで組織の位置関係を確認する

動作から対象を絞った後は、触診によって普段の症状が再現されるかを確認します。

必要に応じてエコーを用い、触れている部分の筋肉・筋膜などの位置や動きを観察します。

触診によるトリガーポイントの同定については、検査者や評価する所見によって一致度が異なることが、システマティックレビューで報告されています。

触った感覚だけで位置を決める難しさは、研究でも検討されてきた課題です。

当院では、触診の反応を動作や画像と照らし合わせ、どの情報が症状とつながるかを判断します。

深部や重要な神経・血管に近い部位では、必要に応じてエコーガイド下で周囲構造や鍼先の位置、刺入方向を確認します。

神経に近い部分では、神経そのものを刺激するのではなく、症状に関係すると判断した周囲の組織を対象にします。

5-3.症状再現部位と周囲の組織を施術対象にする

当院では、普段の痛みが再現されるトリガーポイントを重視するとともに、動作評価から関連があると判断した周囲の組織も施術します。

症状再現部位だけ、あるいは痛む場所だけに施術対象を限定することはしません。

例えば、症状再現部位に加え、その動作で負担を受ける隣接した筋肉や筋膜も確認します。

慢性的な症状では、痛みを感じ続けている周辺の組織も評価します。

施術後は、最初に痛みが出た動作を再び確認し、痛みの出方や動かしやすさの変化をみます。

その反応と、その後の日常生活での経過を踏まえて、次の施術内容を考えます。

6.慢性的な痛みでは圧痛が広がることもある

6.慢性的な痛みでは圧痛が広がることもある

6-1.長期間の痛みと周囲への症状の広がり

長く続く痛みでは、局所の筋肉や筋膜だけでなく、痛みを伝えたり調節したりする神経系の働きも評価する必要があります。

痛みに敏感になると、以前より軽い刺激で痛みを感じたり、広い範囲を押して痛いと感じたりする状態につながります。

そのため、圧痛点が増えたことを、そのまま「原因となるトリガーポイントが増えた」と捉えることはできません。

当院では、最初に痛みが出た場所、広がった順序、動作との関係を確認します。

一部の動きで限局した痛みが出るのか、動きに関係なく広い範囲が痛むのかによって、評価の進め方が変わります。

6-2.線維筋痛症などの広範囲の痛みとの違い

線維筋痛症は、広い範囲の痛みや圧痛に加え、疲労、睡眠の問題などを伴う疾患です。

痛みを伝え、受け取る神経経路の働きの変化が研究されており、単にトリガーポイントが増えた状態とは異なります。

当院でも、短期間に痛みと圧痛が急速に広がり、施術でその進行を抑えられなかった非常に稀なケースを経験しています。

限局した部位の施術だけでは捉えきれない経過として、痛みの広がり方を確認する大切さを感じた経験です。

痛みが急速に広がる場合や、全身の痛みに強い疲労・睡眠の問題を伴う場合は、痛い点を次々に刺激するより、まず医療機関で全体の状態を評価することが先です。

かかりつけ医や内科で経過を伝え、必要に応じてリウマチ科や痛みを専門とする診療科につなげてもらいます。

7.トリガーポイントと圧痛点に関するよくある質問

7.トリガーポイントと圧痛点に関するよくある質問

7-1.押して痛気持ちいい場所はトリガーポイントですか?

「痛気持ちいい」は、施術する場所を考える手掛かりのひとつです。

当院では、その感覚に加えて、普段の痛みが再現されるか、症状が出る動作と関係するかを確認します。

気持ちよさだけでは、症状に関係する組織や深さまでは分かりません。

「いつもの症状と同じか」を伝えていただくことが、評価に役立ちます。

7-2.トリガーポイントとツボは同じものですか?

同じものではありません。

ツボは伝統医学の理論に基づく位置や治療上の概念で、トリガーポイントは筋肉の過敏な部位や症状再現、関連痛などから評価する概念です。

身体上の位置が重なる部分があっても、見つけ方や位置づけが異なります。

当院では、どの動きで痛むか、どの刺激で普段の症状が再現されるかを施術部位の判断に用いています。

7-3.トリガーポイントは自分で押して見つけられますか?

自分で触れたときに「いつもの痛みに近い」と気づくことはあります。

その情報は、診察や施術の際に伝えると役立ちます。

原因となる組織や深さまで、自分の指で特定するのは難しいため、反応を確かめようと繰り返し強く押すことは避けてください。

特に首の前側・横側などは神経や血管が近く、自己判断で深く押し込む場所ではありません。

セルフケアでは、痛い点を探し続けるより、症状が出る姿勢を長く続けないことや、無理のない範囲で身体を動かすことから始めましょう。

7-4.押して痛い場所をすべて治療した方がよいですか?

当院では、押して痛い場所の数を基準に施術しません。

普段の症状の再現、動作との関係、組織の位置関係から、施術対象を選びます。

広い範囲に圧痛がある場合ほど、すべてを刺激する前に、痛みの経過や広がり方を整理する必要があります。

何に対する施術なのかを明確にし、日常生活で困っている症状の変化を確認することが重要です。

8.まとめ

圧痛点とトリガーポイントの違いを考えるときは、押した痛みが、普段困っている症状とつながっているかに注目してください。

さらに、どの動きや姿勢で痛むかを整理すると、施術で評価すべき内容が具体的になります。

なかいし鍼灸院では、普段の症状が再現されるトリガーポイントを最優先で探し、動作評価・触診・必要に応じたエコー観察を組み合わせています。

指で押した場所と実際に刺激が伝わる組織の位置を見極め、鍼でどこへアプローチするかを判断します。

病院で検査や治療を受けても痛みが残っている方は、これまでの診断や治療内容に加え、「どの動きで痛むか」「押したときにいつもの痛みが出るか」を伝えてください。

筋肉・筋膜などの評価を含め、自分の症状に合う施術を考える手掛かりになります。

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参考文献

なかいし鍼灸院