胸郭出口症候群の治し方|保存療法・注射・手術と治療の選び方

胸郭出口症候群の治し方|保存療法・注射・手術と治療の選び方

胸郭出口症候群と診断され、薬やリハビリを続けていても、腕のだるさや痛み・しびれが残っていると、次にどの治療を選べばよいのか迷うものです。

神経性の胸郭出口症候群では、薬物療法やリハビリ、生活動作の見直しなどの保存療法から始めるのが基本です。

症状の経過や筋力低下の有無によって、注射や手術を含めた治療方針を検討します。

この記事では、それぞれの治療の役割と選び方、治療を受けても症状が残るときに見直したい点を解説します。

あわせて、なかいし鍼灸院で行う筋肉・筋膜の評価と、エコーガイド下鍼治療の方針を紹介します。

1.胸郭出口症候群の治し方は保存療法が基本

1.胸郭出口症候群の治し方は保存療法が基本

1-1.まずは薬・リハビリ・ストレッチなどで改善を目指す

胸郭出口症候群は、首から腕へ向かう神経や血管が、首・鎖骨・胸の周囲で圧迫されたり、引っ張られたりして症状を起こす病気です。

腕の痛みやしびれがあるからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。

神経への負担が中心となる神経性胸郭出口症候群では、まず保存療法を行います。

保存療法とは、手術をせずに症状の改善を目指す治療のことです。

薬で痛みを抑えながら、リハビリやストレッチ、症状を悪化させる姿勢・動作の見直しを組み合わせます。

治療中は痛みの強さだけでなく、仕事や家事で腕を使いやすくなったか、しびれが続く時間が短くなったかも確認します。

明らかな筋力低下や筋萎縮がある場合は、保存療法を長く続ける前に専門医による評価が必要です。

痛み・しびれを中心とする状態と、神経の働きが落ちて手を動かしにくくなっている状態では、治療の進め方が異なります。

1-2.神経性と血管性では治療方法が異なる

胸郭出口症候群には、腕神経叢という神経の束に問題が生じる神経性と、鎖骨下静脈・動脈に問題が生じる血管性があります。

本記事では、主に神経性の治療を説明します。

神経性では痛みやしびれ、腕のだるさなどが治療の対象になります。

血管性では血液の流れを評価し、血管の状態に応じた治療を行います。

片腕が急に腫れた、青紫色になった、手が急に白く冷たくなったときは、ストレッチや鍼治療で様子を見ず、速やかに医療機関を受診してください。

急な変化は、血栓や血流障害を確認する必要があります。

2.胸郭出口症候群の保存療法

2.胸郭出口症候群の保存療法

2-1.薬物療法

薬物療法では、痛みやしびれを和らげ、日常生活やリハビリに取り組みやすくすることを目指します。

痛みに対する消炎鎮痛薬のほか、症状に応じて神経障害性疼痛に用いる薬が選択されます。

薬を飲んで痛みが軽くなっても、仕事中の姿勢や腕の使い方による負担が続いていれば、症状が繰り返されることがあります。

そのため、薬の効き方とともに、どの場面で症状が戻るのかを確認することが大切です。

薬は症状の緩和を担い、リハビリや生活の見直しは身体への負担を調整する役割を担います。

薬そのものが、神経や血管を圧迫している構造を直接取り除くわけではありません。

薬だけで治るかを考えるより、日常生活で症状を起こす条件も含めて治療を組み立てます。

2-2.リハビリ・運動療法

リハビリでは、首や肩の柔軟性だけでなく、肩甲骨の位置や動き、腕を支える筋肉の働きなどを評価します。

そのうえで、筋力訓練、ストレッチ、姿勢や動作の練習などを組み合わせます。

目標は、首や肩を大きく動かせるようにすることだけではありません。

仕事や家事で腕を使うときに、神経周囲へ負担がかかり続ける状態を見直すことも重要です。

たとえば、胸を張って肩を後ろへ引けば、誰でも適切な姿勢になるわけではありません。

姿勢を変えた結果、腕の痛みやしびれが増えるなら、その姿勢を無理に維持する必要はありません。

リハビリ中に症状が強くなる場合は、どの運動で、どこに、どのような症状が出たかを担当者に伝えてください。

運動の種類や強さを調整するための情報になります。

2-3.ストレッチと日常生活の改善

当院では、デスクワークや同じ姿勢の継続によって、腕のだるさや痛み・しびれが強くなる患者さんを多く診ています。

施術時の状態だけでなく、仕事中に症状が出る条件を確認することを重視しています。

日常生活では、次の点を見直します。

  • 長時間同じ姿勢を続けず、仕事の合間に姿勢を変える
  • 腕を支える位置や、机・椅子との距離を調整する
  • 首・胸・肩周囲のストレッチを、症状が強くならない範囲で行う
  • 痛みやしびれを繰り返し誘発する動作を減らす
  • 首を強く揉むことをセルフケアの中心にしない

ストレッチは、強く伸ばすほどよいものではありません。

腕や指先へのしびれが増える動きは中止し、動かし方を見直してください。

当院ではストレッチを主に指導しますが、全員に同じ方法を当てはめることはしません。

どの姿勢で症状が出るかを確認したうえで、取り入れる動きを選びます。

3.胸郭出口症候群の注射治療

3.胸郭出口症候群の注射治療

3-1.斜角筋周囲への局所麻酔薬注射

注射には、症状を和らげる目的に加え、症状に関わる部位を評価する役割があります。

首の横にある斜角筋への局所麻酔薬注射は、斜角筋ブロックと呼ばれます。

注射後に腕の痛みやしびれ、動作時のつらさがどう変わるかを確認し、診断や手術を含む治療判断の参考にします。

注射を受ける際は、「症状を和らげるためか」「治療方針を判断するためか」という目的を確認しておくと、結果を理解しやすくなります。

効果があった時間や、楽になった動作を記録しておくことも役立ちます。

一時的に症状が軽くなったことと、神経に負担をかける構造や生活上の条件が解消したことは分けて考えます。

注射後の反応を踏まえ、リハビリや次の治療につなげます。

3-2.ボツリヌス毒素注射などの選択肢

ボツリヌス毒素注射は、筋肉の働きを弱める作用を利用し、斜角筋などへの使用が検討される治療です。

胸郭出口症候群に対しては、専門医によって使用の判断が分かれています。

斜角筋への注射を調べたランダム化比較試験では、主要評価である6週間後の痛みについて、プラセボ注射に対する有意な優位性は示されませんでした。

保存療法の次に、全員が受ける治療として位置づけられているものではありません。

検討する際は、期待する効果、効果を判定する時期、費用や適応を担当医に確認します。

病院で行う薬剤の注射と、当院で行うエコーガイド下鍼治療は、それぞれ異なる施術です。

4.胸郭出口症候群で手術が必要になるケース

4.胸郭出口症候群で手術が必要になるケース

4-1.保存療法を続けても改善しない場合

神経性胸郭出口症候群では、保存療法を行っても生活上の支障が残る場合に、手術を検討します。

2024年のINTOS専門家コンセンサスでは、一般に3~6ヶ月の保存療法を行ったうえで、手術を検討する方針が示されています。

この期間は治療方針を判断する目安であり、3ヶ月経過した時点で自動的に手術を決めるものではありません。

診察では、痛みやしびれの程度、仕事・日常生活への影響、圧迫に関わる部位、これまで行ったリハビリの内容と反応を確認します。

治療を続けても変化が乏しい場合は、現在の治療内容を整理して担当医へ相談してください。

薬を飲み始めてからの期間だけでなく、身体の状態に合った運動療法や生活調整に取り組めていたかも、見直すポイントです。

4-2.筋力低下や筋萎縮が進んでいる場合

手の筋肉が痩せてきた、指の力が落ちてきたときは、早めに専門医へ相談してください。

具体的には、次のような変化が目安になります。

  • 手の甲や小指の付け根の筋肉が明らかに痩せてきた
  • 以前より物を握る力や指先の力が落ちた
  • ボタンを留めるなど、細かな動作が難しくなった
  • 手の動かしにくさや麻痺が進んでいる

明らかな筋萎縮や筋力低下がある神経性胸郭出口症候群では、保存療法を先行させずに手術を検討する方針が専門家コンセンサスで示されています。

腕がだるくて使いたくない状態と、実際に筋力が低下している状態は、診察で見分ける必要があります。

以前できていた動作が難しくなってきたら、次の定期受診まで放置せず、担当医に変化を伝えましょう。

4-3.手術ではどこを治療するのか

手術の目的は、神経や血管に負担をかけている部分を広げたり、圧迫に関わる組織を処理したりすることです。

状態に応じて、斜角筋に対する手術、第1肋骨の切除、小胸筋腱の切離などが選ばれます。

同じ胸郭出口症候群でも、治療する部位や術式は異なります。

手術の説明を受ける際は、どこで圧迫が起きていると考えられるか、どの症状の改善を目指すかを確認してください。

5.治療を受けても胸郭出口症候群が改善しない理由

5.治療を受けても胸郭出口症候群が改善しない理由

5-1.日常生活で筋肉や神経周囲に負担がかかり続けている

治療後は楽になっても、デスクワークを続けると症状が戻る場合は、仕事中の負担を確認する必要があります。

当院では、同じ姿勢を続けることで腕のだるさや痛みが強くなる患者さんを多く診ています。

「姿勢が悪い」という説明だけで終わらせず、どの姿勢をどのくらい続けると症状が出るのかを問診で確認します。

たとえば、キーボード操作中に腕が重くなるのか、マウスを使う側だけがつらくなるのかによって、見直す動作は変わります。

症状が出始めるまでの時間や、姿勢を変えたときの反応も評価材料です。

見た目の姿勢だけでなく、普段の症状が再現される条件を捉えることが重要です。

その条件をもとに、施術部位と日常生活での調整を考えます。

5-2.斜角筋・小胸筋以外の筋肉も症状に関係している

当院では、斜角筋と小胸筋を主要な評価対象としながら、肩甲挙筋などの筋肉にも注目します。

肩甲挙筋は、首と肩甲骨をつなぐ筋肉です。

当院では、首から肩甲骨周囲の痛みに、肩甲挙筋の関連痛が関わっているかを確認します。

関連痛とは、症状に関係する部位から離れた場所に感じる痛みのことです。

痛む場所だけを施術するのではなく、その痛みにつながる筋肉を評価するための視点になります。

触診では、単に押して痛いかではなく、患者さんが普段感じている痛みが再現されるかを重視します。

姿勢や動作による反応と合わせて、トリガーポイントの関与を評価し、施術対象を絞り込みます。

腕や前腕に症状が残る場合は、その部位の筋肉も評価します。

首・胸周囲だけでなく、評価所見に応じて前腕まで施術対象を広げます。

こうした筋肉由来の痛みの評価と、胸郭出口で生じている神経・血管の問題は、それぞれ分けて整理します。

筋肉の関連痛があることだけで、胸郭出口の神経圧迫を判断することはしません。

5-3.長く続く痛みやしびれは改善に時間がかかる

当院の臨床経験では、胸郭出口症候群は改善までに時間を要する傾向があります。

痛みなら早い、しびれなら改善しやすいという区分で、経過を予測することはしていません。

来院される方は、腕のだるさや痛みが目立ち、痛みとしびれが混在しているケースが多いです。

そのため、症状があるかないかだけでなく、それぞれがどのように変化しているかを確認します。

仕事を続けられる時間、症状が出る頻度、腕を使った後のつらさなどを、施術前後の評価に用います。

短時間の変化だけで判断せず、日常生活での経過を追うことを重視しています。

変化が乏しい場合や症状の範囲が変わった場合は、診断の再評価も必要です。

頚椎の病気や肘・手首付近の末梢神経障害でも似た症状が生じるため、担当医に現在の状態を伝え、ほかの原因が関わっていないか確認します。

6.なかいし鍼灸院で行う胸郭出口症候群への鍼治療

6.なかいし鍼灸院で行う胸郭出口症候群への鍼治療

6-1.斜角筋・小胸筋を中心に筋肉と筋膜を評価する

広島市中区のなかいし鍼灸院には、整形外科で胸郭出口症候群と診断され、薬物療法やリハビリを受けても症状が残っている方が来院されています。

当院では、診断名だけで施術部位を決めません。

病院で受けた説明や治療経過を確認したうえで、症状を再現する姿勢・動作、触診、エコーの所見から施術対象を考えます。

主に評価する筋肉と、その役割は次のとおりです。

筋肉

当院での評価・施術の考え方

斜角筋

首の横にある主要な評価対象で、腕神経叢との位置関係を確認する

小胸筋

胸の前側にある筋肉として、症状との関わりを評価する

肩甲挙筋

首・肩甲骨周囲の痛みに対する関連痛の関与を確認する

前腕の筋肉

腕・前腕の症状と評価所見に応じて施術対象にする

筋肉に加え、筋肉を包む筋膜などの軟部組織も確認します。

問診や動作評価で得た情報と、触診で普段の症状が再現される部位を照らし合わせ、鍼を行う場所を選びます。

6-2.エコーガイド下で血管と腕神経叢を確認する

斜角筋周囲には、腕へ向かう神経の束である腕神経叢と、血管が近接しています。

当院では、この領域への刺鍼をエコーガイド下で行います。

まずエコーで血管の位置を確認し、腕神経叢や周囲の筋肉との位置関係を把握します。

その画像を見ながら、施術対象となる組織への刺入方向や鍼先を確認します。

施術対象は、神経そのものではなく、腕神経叢周囲の筋肉・筋膜などの軟部組織です。

首の横を外から触れるだけで位置を推定するのではなく、身体の内部を画像で確認しながら施術を進めることが、当院の方針です。

患者さんにも画像を共有し、どの組織を確認し、どこを施術対象としているかを説明します。

6-3.ストレッチと鍼治療を組み合わせて症状を評価する

当院では、鍼治療とともに日常生活でのストレッチを指導します。

施術する筋肉だけでなく、普段どの姿勢で症状が出るかを踏まえて、取り入れる動きを考えます。

仕事中に同じ姿勢を続けている方には、姿勢を変えることや、腕・肩周囲に負担をかけ続ける条件の見直しも伝えます。

施術後の反応に加え、仕事や家事での変化を確認しながら方針を調整します。

胸郭出口症候群では、改善まで時間がかかることを踏まえた経過の評価が必要です。

当院では、だるさ・痛み・しびれを分けて確認し、生活上の支障がどう変わったかまで見ていきます。

7.胸郭出口症候群の治療でよくある質問

7.胸郭出口症候群の治療でよくある質問

Q.胸郭出口症候群は自然に治りますか?

症状を誘発する動作や負担が減ることで、軽くなることはあります。

症状が続く、繰り返す、仕事に支障がある場合は、自然に治るのを待ち続けず、整形外科で状態を確認してください。

Q.ストレッチだけで治りますか?

ストレッチは保存療法の一部です。

ストレッチだけで変化が乏しい場合は、筋力や肩甲骨の動き、仕事中の姿勢なども含めて、リハビリの内容を見直します。

Q.腕のしびれは治りますか?

しびれの原因と、神経の働きを確認したうえで治療方針を決めます。

当院では改善に時間を要する例が多く、しびれの範囲や強さ、続く時間、日常生活への影響を追って評価しています。

Q.手術しないと治りませんか?

神経性胸郭出口症候群では保存療法が基本です。

治療を行っても生活上の支障が残る場合や、明らかな筋力低下・筋萎縮がある場合に、専門医が手術を検討します。

Q.何ヶ月治療すればよいですか?

神経性で手術を検討する際の目安として、専門家コンセンサスでは一般に3~6ヶ月の保存療法が示されています。

これは治るまでの期間や、当院の鍼治療の通院期間を示す数字ではありません。

治療内容と症状の変化を確認し、継続するか、別の評価や治療へ進むかを判断します。

Q.鍼治療は対象になりますか?

当院では、病院で診断・治療を受けても残る腕のだるさや痛み・しびれについて、筋肉や周囲の軟部組織を評価します。

現在の症状とこれまでの経過を確認し、当院の施術対象になるかを判断します。

8.まとめ|胸郭出口症候群は症状に合わせた治療選択が重要

胸郭出口症候群の治療では、現在の症状に合った治療を選び、経過に応じて見直すことが大切です。

神経性で痛みやしびれが中心なら、まず保存療法に取り組みます。

治療しても生活上の支障が変わらないときは、リハビリの内容や診断を再確認し、必要に応じて注射や手術について担当医に相談してください。

筋力低下や筋萎縮が進む場合、腕に急な腫れ・色調変化・冷感が出た場合は、医療機関での評価を優先します。

病院治療後も症状が残っている方に対して、当院では斜角筋・小胸筋を中心に、肩甲挙筋や前腕の筋肉も含めて評価します。

症状を再現する姿勢・動作と軟部組織の状態を確認し、斜角筋・腕神経叢周囲にはエコーガイド下で鍼治療を行います。

胸郭出口症候群を治したい方へ

胸郭出口症候群と診断され、薬やリハビリなどの治療を受けても、腕のだるさや痛み・しびれが残っている方へ。

現在の症状が当院の鍼治療の対象になるか判断に迷う場合は、LINEからご相談ください。

参考文献

運営者情報

運営者情報
会社名 株式会社HARI51「なかいし鍼灸院」
代表者 代表取締役・院長 中石真人
経歴 高陽東高校→明治鍼灸大学→朝日医療専門学校

トリガーポイント・ファシアリリース専門鍼灸院として、症状の改善はもちろん、自分の健康を自分の力でコントロールできる人を一人でも多く増やすことを理念に掲げ、日々施術にあたっている。

資格 鍼灸師・柔道整復師
創業 平成24年9月3日
所在地 広島市中区上八丁堀4-28松田ハイツ702
電話 050-1255-9166

なかいし鍼灸院